故安岡正篤氏の東洋的な考え方が必要な時代

最近、故安岡正篤氏の著書を手にする事が多い。安岡氏の著書に触れるに付け、生前にお会いしたかったと思う。世界的な金融危機が起きている今こそ、安岡氏の著書から今後についてのヒントを得るのは有意義と思っている。安岡氏は東洋民族の先覚者には"思考の三原則"とも言うべき共通の考え方が見られることを指摘しており、その三原則とは「目先でとらわれないで、できるだけ長い目で観察する」、「一面にとらわれないで、できるだけ多面的、できるならば全面的にも考察する」、「枝葉末節にとらわれないで、できるだけ根本的に観察する」ことの様だ。特に、事業の問題や困難な問題などを目先で考えたり、一面的に捉えて観察したり、枝葉末節をとらえて考えるのと、少しながい目で見る、多面的・全面的に見る、あるいは根本的に見るということでは非常に違ってくる。ことによると結論が反対になる場合もあることを指摘している。多くの著書のホンの一部を例に上げると、安岡氏の偉大さが消え、名声を失わせる行為となってしまうかもしれないが、今の日本人の多くがお金亡者になり、今回の金融危機による不況で先が見えない時に安岡氏の著書は読むのは有意義と考える。戦後の日本は米国の寛容な占領政策によって親米的な国民・国家になったわけだが、米国の良い面だけでなく悪い面も多く学んでしまった。特に、バブル経済崩壊後の20年は「倫理観の喪失」、「拝金主義」が横行し、米国の短期利益主義の社会経済システムに追随して"砂上の楼閣"造りに走ってしまった。この米国至上主義はマスコミが煽ってポピュリズムを助長し、政治家も企業と同じように短期的な成果が求められて長期的な政策が打ち出せない状況で政治も混乱している。米国のオバマ大統領はIT社会のポピュリズムを利用して当選したが、今後は逆にポピュリズムによって自縄自縛に陥る可能性も予想される。現に、ポピュリズムを意識して政府スタッフに多くの大物を起用しているが、日本の格言(?)の「船頭多くして船進まず」の状況になっている。更に、新ニューデール政策を掲げて全米の橋梁の更新や環境・省エネの推進を謳っているが、この政策を実施するには海外から資機材を多く輸入することになり、結果は貿易収支の赤字を拡大してドル安を招いてしまう危険性を孕んでいる。勿論、ドル安は景気対策の財源である米国債離れの原因となるので絶対に阻止する必要があり、オバマ大統領の手腕が問われることになる。米国民はオバマ大統領はハーバート大学ロースクールの教授まで勤めた天才だから、金融危機で危機に陥った米国を救ってくれる事を期待しているのだろうが、忘れているのは米国を危機に落としたのは天才と称された人達であったことである。長い歴史を持つ東洋文明は多くの危機を克服してきた知恵を持っていることを思い出し、再度東洋的な考え方で問題を処理する事は如何であろうか。
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