日本の民営委託制度で欠けている罰則規定

先日、外資系不動産投資会社の社長さんと雑談している時に米国と日本の行政の仕組みについて初めて知った事があった。社長さんは金融マンとして米国経験も長く、米国の地理的な面を含めて米国については造詣が深い人である。私が今回の東日本大震災の復旧対応や二次被害の福島原発事故に関してスペシャリストの技術者がゼネラリストの下位に置かれ行政が機能していないので、明治時代の工部省的な技術者集団を再度形成すべきであると話した時に社長さんから意外な事を聞いて驚いた。社長さん曰く、米国の行政組織には技術者はいないと言うことであった。私の疑問として誰が外部委託をチェックするのか問うた所、チェックも民間のコンサルタント会社に委託するシステムであるので役人が少なくて良いとのことであった。社長さんは東大での優秀な方なので私の考えなどお見通しであり、私の疑問の不正に関しては間髪をいれずにコンサルタント会社が間違った場合には罰せられるとのことであった。米国の金融システムに関しては憤慨するほど罰則規定が甘いと思っていたのだが、公共工事などに関する民間委託に関しては不正や間違いに対して責任を負わせるシステムになっている様だ。勿論、罰則規定がどの程度厳しいかは分からないが、米国社会は合理的に考えられている。翻って日本の場合、我々の建築業界一つ見ても民間委託の状況には雲泥の差がある。規制緩和により建築確認申請における民間委託会社が発足したが、発足自体が役所勤務経験者を必要としたものであり、少なくても役所勤務の資格者を採用しなければ会社設立が出来ない仕組みであった。更に、構造偽装事件で分かるように、審査した側の責任は一切と問われない仕組みであった。何が規制緩和だと言いたい内容であり、日本の場合には所詮役人が作る制度に政治家が乗っているだけなので、本当の意味での規制緩和や民間委託など存在もしていない。役人の身内の民間委託だから罰則規定もないことが良く分かった。今の日本の政治家は碌に勉強もしていないので、役人の協力を仰がなければ何も出来ない情けない存在だ。この現実を考えると、今後幾ら選挙に行って期待する政党に入れても、国民が望む社会制度は構築されない。特に、民主党が出来もしない政治主導を唱えて挫折したために、余計に状況が悪くなった。尤も、公務員改革自体を公務員に遣らせる矛盾を考えると、日本と言う国は救いようもない。最近、経済産業省の官僚の古賀某が古巣の経済産業省と対立しているかのような行動を取っているが、所詮はコップの中の嵐であり、国民を考えた争いでない事は確かだ。当然だが、外資系の社長さんも日本における今の政治状況から積極的に不動産投資を進めることに躊躇いが出るとのことであった。過去を振り返ると、自民党の小渕政権の時の不況対策が一番優れており、小渕総理が急逝したことが残念であることで社長さんと一致した。小渕総理以後は正に役人に振り回されて何の改善もされず、政治が機能しなくなった今の現実がある。小渕総理は規制緩和による民間委託を進めたのではないが、的を得た経済対策を行なった事は確かであった。小渕総理以後は財務官僚が仕切った政策で悪戯に赤字国債を増やしただけであった。何が問題かは一目瞭然である。日本の回復には官僚を排除した徹底的な民間委託とそれに伴う罰則規定だ。
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