東日本大地震の南北の揺れで明暗

誰もが気付いていることなのだろうが、東日本大地震の揺れは南北に揺れた為に新幹線の脱線事故や高速道路を走行中の車にも被害がなかった。マスコミなどは中国の鉄道事故と比較して日本の新幹線の運行技術は優れているので、東日本大震災でも地震を予知して停止したために脱線事故などはなかったと自慢げに書いていた。しかし、新潟中部地震の時には脱線事故があったので、東日本大地震で新幹線が無事だったことは理由があった筈である。このため、専門家の間では検証済みであろうと推定されるが、一般には流布されないので多くの人が技術を過信して本質を見失う恐れもあると思われるので、地震に対しては素人あるが、次の地震のために揺れに対して考察して見たい。地震の一定方向の強い揺れは過去の地震では思い出さない。都内において経験した強い地震は今から遡る事24年前に起きた直下型地震であるが、この時には最初が縦揺れであったために、一瞬40~50cm下に沈んだ様な経験をした。その後に大きな横揺れの地震に見舞われた。この時の地震は震度5クラスで、都内のエレベーターが全部停止した程の大きさであった。この時の印象では縦揺れが強烈であったために横揺れの方向の記憶がない。今回の大地震で南北の横揺れであったと気付いたのは、ひとつは事務所内の設置物の保管位置による落下状況であり、ふたつには大地震時に常磐高速道路を日立からいわきに掛けて走行していた人の意見であった。今回の地震時の落下物についてふり返って見ると分かると思われるが、南北に直角に配置していた棚などの場合には、棚の上に置いていたものが飛んで落ちた筈だ。しかし、南北に平行に配置した棚などのものは影響が少なかった筈である。また、私が驚いたのは仙台市内で一般道路を走っていた車で地震時に緊急停止していたにも拘わらず車内で左右に大きく揺れたと発言しているのに、常磐高速道路を南から北に走行していた車に乗っていた人達は地震に気付かなかった事である。この事に関しては、今回の揺れが南北であったのに感謝しなければならないと思われる。もし、東西の揺れであったらと考えると恐ろしい大惨事に巻き込まれた可能性がある。尤も、地震は南北の揺れであったが、東日本の国土は東に移動しているのである。また、地面が沈んでもいるのである。素人の私では現象面だけしか語れないが、今後に地震の専門家のコメントなどを収集してみたいと考えている。なお、今回の大地震に関して当社の専門である建築物について言及すると、入居しているアーバン虎ノ門ビルは地形が四角形に近く建物も正方形であるのでどの方向の地震にも強いと考えられているが、今回の南北の揺れの地震でも影響が少なかった。最新のビルと比較すると大きな柱が設置されているが、この柱は耐震性の強化のために意図的に設計されている。確かに、今風の無柱空間のオフィスなら有効面積が多くなり、レイアウトの面で便利かもしれないが、耐震性に限れば弱いことを認識する必要がある。デザイン重視の現代ではややもすると安全重視の建物は否定されがちであるが、変形した建物や細長い建物は地震に弱いことも理解して入居ビルを選択することをお勧めしたい。現代社会はコスト削減のために重装備の物に関してガラパゴスと言う呼称を付けて時代に取り残される様な意見が主流だが、ガラパゴスは滅んだのではなく今でも存在し続けていることを忘れてはならない。21世紀はデザインとソフト重視の社会だが、20世紀のハードの経験があってこそと理解しないと非常時には役に立たない物で溢れる事になる。コスト削減の前に昔の人の教えである「備えあれば憂いなし」の意味を考える必要がある。
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