朴槿恵さんの韓国大統領選挙の勝利を祝す

韓国の大統領選挙で朴槿恵さんが勝利したのには感慨深いものがある。私は彼女の父親が大統領であり、不幸にも側近に暗殺された時に日韓経済交流の仕事に携わっており、ポスト朴の情報を上司から命じられたが、その後の予想もつかない展開に翻弄された苦い思い出がある。今回の大統領選挙に朴槿恵さんは父親の軍事政権時代と戦前の日本軍人としての経歴を糾弾され、心ならずも謝罪した苦痛には同情を禁じ得ない。軍事政権以降で野党側から選出された大統領の殆どが歴史の見直しを行い、戦後50年以上経過したにも拘わらず、恰も昨日の如く対日協力者が資産まで収奪されるのは決して未来志向の姿ではないと思われた。時代時代において人は生きるために行動するのであって、現在の様な民主国家の成立以前の国において反国家的な問題で糾弾することの誤りに気づいていない。歴史学者の誤りは現在から過去を見て分析する姿勢と言われている。確かに、現在から過去を見るとその後の経過を見た者にとっては幾つかの選択肢が見えるが、過去の時点ではその選択肢が考えられたどうかは疑問だ。韓国の民主化は1987年6月29日に盧泰愚大統領の民主化宣言で初めて実現したのである。何故民主化が遅れたかは自明の如く隣国の北朝鮮と軍事的に対峙していたからである。朝鮮戦争を挟んで政権を担当した李承晩大統領時代の韓国は現在のアフリカ諸国より貧困であった。この状況を憂いた若手軍人が軍事クーデターで維新を断行し、その後日韓国交回復を果たして経済成長路線を築いたのである。その立役者が朴槿恵さんお父親であった。漢江の奇跡と言われた高度経済成長を実現し、今日の韓国経済の礎を築いた功労者であったことは事実である。特に、清貧な軍人政治家であり、後の歴代の大統領の様に親族一党で資産蓄積に走った者たちとは大きく違ったのである。何時のどの様な時代もそうだが、人々の欲求には節度がなく、何かを得られれば別なものが欲しくなる。政治は常に国民の何かしらの不満を受けなければならない宿命を持つ。勿論、この様な不満を持つことに対して国民が甘えているなどと言う政治家がいるが、国民から選ばれた政治家が言う言葉ではない。国民とはそういうものだ。しかし、戦後50年経過した後も対日協力者の弾劾を続ける姿は単に国民の不満を煽り、政敵を潰すのに利用していると見做されても仕方がないものである。その様な意味で、今回の大統領の選挙で朴槿恵さんが大統領に選出されたことは日韓関係のターニングポイントになる可能性が高い。日本に韓流ブームが起き、韓国民が日本に対して自信を深めた今こそ、日本と韓国が未来志向で経済的文化的交流を拡大し、相互繁栄する提携関係の構築が必要なのである。ちっぽけな島の竹島問題で壊してならない流れなのである。朴槿恵さんを大統領に選んだ韓国民は過去ではなく未来志向を求めたのである。日本国民もこれに答える必要がある。
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