敢えて流れに棹をさす見方

安倍ノミクス効果で円安が進み、株高は止まらない。本来なら諸手を挙げて喜ぶことなのだろうが、浮かれる気分にならないのは何故だろうと自問自答してみた。証券会社からノンバンクで定年まで働いて長年個人的に株の売買を行ってる友人も今回の得体のしれない株高には一抹の不安を持っている。現行の株高は実体が伴わない金融相場であるので、安倍政権が実体が伴う政策を打ち出さないとあっと言う間に株高も失速すると言う懸念は誰もが持っているのは確かだ。しかし、先行きに対する漠然とした不安はありきたりの説明では答えにならないもの真実だ。安倍政権はデフレ脱却を目指して企業に賃金アップの要請をしているが、それに答えられる企業は少ないと思われるし、兎にも角にも国民の気分をデフレからインフレに持ってゆくことで一生懸命なのが手に取るように分かる。グローバル経済の中で企業が収益を向上したからと言って過去の様に国内に工場などを造ることなどは望むべくもない状況なのは安倍政権も理解していることなので、国民は次の一手をじっと見守っている筈だ。3年間の民主党政権が余りにも酷かったので、安倍政権の普通に行っている政権運営が眩しく見えるほど頑張っていると国民の目には写る。

しかし、少子高齢化社会、地方疲弊、財政難に関しては何ら有効な手は未だ打たれていない。金融相場だけで目前に迫る消費税増税を乗り切れるほど甘くはないのが現状だ。不動産業界も地価は上がってきたと言っているが、今後も上昇するのに必要な賃料などの収益の上昇の目途は立っていない。幾らデフレからインフレに転換しても需給バランスが改善されなければ一時的な現象で終わってしまう可能性が高い。過去を振り返っても意味がないと言われるかもしれないが、日本経済が戦後の幾度かの試練を乗り越えられてきたのは国内の消費力が強かったからと考えられる。社会主義国家と言われた程貧富の差が縮まり、国民の80%が中流意識を持った社会が旺盛な消費を支えたのであった。勿論、これ以外にも色々な原因があってのことではあるが、金融資本主義が主流になり、収益の向上よりコスト削減が経営者の優先意識になっている現在では、口で言うほど消費を回復させるのは難しい。

時間を過去に戻すことは出来ないので、新たな仕組みを構築する必要があることは間違いはないが、明確なのは米国の仕組みでは日本の経済が復活することがないという事だ。シュンペンターの創造的破壊などと言う言葉が流布されているが、グローバル経済と情報化社会がデフレを引き起こし、多くの雇用を奪っていることを考えれば、規制緩和だけで解決しないのは自明の理だ。大阪維新の会などはカジノを政策提案しているが、ギャンブルを財源にする案など枝葉末節の類だ。国鉄が民営化されてJRになって収益が生まれているので、民営化すればすべて良くなると思われがちだが、国鉄のままで今日の様な業務の拡大をさせたならば、地方の疲弊を促進させた廃線を防ぐことが出来たのではないのか。今更仮の話をしても仕方がないが、企業経営が分からない官僚どもが経済に口出ししていることが問題なのだ。

何れにしても、現在の日本はマスコミを動員してポジティブキャンペーンを行っているので、先行きが明るい様に錯覚しているが、実際は財務省が消費税値上げを実施する環境つくりと、TPP交渉参加で米国の支持を取り付けた円安で動いているだけの見せかけ景気に過ぎない。尤も、見せかけが本当にならないとも限らないので取り敢えずは安倍政権のお手並み拝見だろう。

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