中国の防空識別圏設定の深読み

中国の防空識別圏設定に関する日本のマスメディアの報道を見ると、中国と言う国は他国の事を何も考えない中華思想で凝り固まっており、外交は頗る幼稚としか思えなくなる。しかし、それは本当なのだろうか。今回の件を流された情報から分析すると違った側面が見えてくる。

先ず、今回の防空識別圏の設定は、中国に好意的な政権の台湾や韓国に知らされず、然も台湾と韓国の領域を重複した防空識別圏の設定であることだ。中国が尖閣諸島を領土とする主張に基づく防空識別圏設定ならば、現在友好的な台湾の馬政権と韓国の朴政権と軋轢を起す様な防空識別圏の設定を行わなかったのではないかと言うことだ。次の事は未確認情報の類だが、習国家主席が今回の防空識別圏の設定に関して日本とは資源争いから戦略的争いに変わったと発言したことである。

一般的に誤解されていることだが、中国と日本の尖閣諸島周辺の資源の共同開発の合意は、領土問題ではなく、大陸棚の延長に関してのものであった。日本のマスメディアは尖閣諸島に対しては、中国は海洋資源の存在を知ってから領土を主張するようになった論調が主流である。この日本の見方に対して中国は腹が立っていたのかもしれない。日米が現在設定している防空識別圏は中国にとっては喉元に突き付けられた刃と思っているのかもしれない。長く外国勢力に領土を蹂躙された民族にしか分からない防空概念だ。

鄧小平以前の周恩来、毛沢東も尖閣諸島に関しては将来の知恵に委ねたいと発言したことを捉えて日本のマスメディアは、中国が尖閣諸島を領土として主張し始めたのは中国が経済力を増して日本に経済的に依存しなくても良くなったからだとの見方を取っている。しかし、尖閣諸島問題が大きくクローズアップしたのは石原慎太郎前知事が米国のNYで購入発言をおこなってからであり、その沈静化を図るために国有化した民主党の野田前首相の行為からであった。尖閣諸島問題を先鋭化したのは中国側ではなかったことを理解しないと今回の防空識別圏の設定も理解できないことになる。

尤も、米国のコントロール下に置かれている日本のマスメディアの報道を見聞きして判断したのでは、日中対立を煽られ、中国を敵視するようになる。中国国防部の報道官が、今回の防空識別圏の設定はいかなる国に脅威を与えるものではないと発言したことも重視すべきだ。これに対して、日本のマスメディアは米国のB52の飛行や日本の自衛隊の飛行で中国がスクランブルを掛けてこなかったのは、広範囲の設定でレーダー網が不備であるからと指摘し、民間航空機の飛行の安全性を煽って不安視する情報を流している。この様なデマ記事を読むと憤りを感じる。今の中国国力でレーダー網を完備していなくて防空識別圏を設定する訳がないのである。月に無人探査機を送ろうとす中国に対しての技術力のなさを強調した歪曲した報道は何をか況やである。

中国の今回の防空識別圏の設定は尖閣諸島を巡る日中間の騒動に対して再度将来の知恵に委ねる一石かもしれないと考えてみるのも面白いかもしれない。短絡的か意図的な報道で日中間を煽るマスメディアの報道は戦前の大陸進出を彷彿させるものなので要注意が必要だ。

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