グローバルピッグファーム㈱を訪問して

会社案内の表紙に「いつも"日本一の豚肉"をめざして」を掲げているグローバルピッグファーム株式会社を訪問した。本社は群馬県渋川市北橘町上箱田800に所在し、立地的には赤城山の麓の山林の中にあり、羨ましい程の環境の良い所にあった。

訪問の理由は、伊香保カントリー倶楽部で弊社が主催するゴルフコンペに対して同社が協賛会社に応じてくれたからである。訪問前から伊香保CCの田中社長は車の中で美味しい豚肉を絶賛していたが、私は車外の風景を見ながら聞き流していた。協賛してくれた会社に対して失礼と思われるかもしれないが、会社自体ではなく、同社がクラブ側の主催するオープンコンペのスポンサーなのを知っていたので、田中社長の得意の宣伝と穿った見方をしたからである。

しかし、会社の立地や敷地内に併設したショップを見てゆくうちに、会社の特異性を感じる様になった。この様に書くと、お前も田中社長と同じかと言われそうだが、その後本社家屋に入り、取締役副社長の樋田さんから会社について説明を受けて独特の経営哲学を持った企業なのが分かった。会社設立が昭和58年(1983年)であり、この社歴で無借金経営と聞いて驚いた。私も経営者の端くれであり、無借金経営は何代もに渡って経営が上手くいった会社にだけもたらされる恩典と理解していたからである。ちなみに、私事で恐縮だが、昭和58年は私が結婚して所帯を持った年である。その年に生まれた会社という事で親近感が増した。

樋田さんから提携している養豚農家の後継者を会社に預かって研修させるシステムや新卒獣医も現場で何年も働いた後に初めて評価されるシステムなど参考になった。同社の社員は一定の資格を持った専門家集団であり、一人前の専門家になって初めて評価されるシステムは正に品質を重視する会社と思われた。樋田さんの話を聞いているうちに私の頭の中にデジャビの様に浮かんだことがあった。それは未だ30才前後の頃に取引先の金融機関の子会社のコンサルタント会社の会員になった時の研修会でのことであった。新潟から参加した養鶏場経営の2代目の方が父親から言われた話であった。2代目の彼は養鶏場の将来を勉強するために東京に頻繁と出かけて経営セミナーに出ていた時に、父親から"鶏の事は鶏に聞け"と言うわれ、その後漸くその意味が分かったとの事だった。

昨今は情報化が進み、データ分析手法などが重視され、現場軽視の風潮があるが、現場を知らない経営者や社員は役に立たない。情報とは経験知と相まって初めて有意義なものが生まれるのである。久し振りに、本物の会社を見た思いであった。帰りに、ショップでしゃぶしゃぶ用のもちぶたなどを購入したが、協賛用の商品まで頂いているのに社員割引にしていただき恐縮してしまった。

田中社長から購入を大分勧められたのだが、ワイフがあまり肉を食べないので困った事は確かであった。しかし、会社で聞いた事を実際確認するには商品を賞味することなので、何種類かを購入したのである。早速、帰宅した翌日に豚しゃぶにして食べたのだが、肉を余り食べないワイフまで絶賛するほど美味しかった。肉の事など余りわからない彼女が、今まで食べていた豚肉はもう食べられないと言い出す始末だ。確かに、本当に掛け値なしで美味しかった。ゴルフコンペの協賛会社だから称賛するのではなく、立派な経営哲学を持った会社が地方に存在したことに驚き、更に言葉に違わぬ品質の良い豚肉を提供している姿勢に学ぶべき点が多いからである。この様な会社に勤務する社員は幸せであり、翻って経営者の責任の重さを痛感した次第だ。

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