記憶喪失症の社会

本当に現代社会は記憶喪失に罹ったかと勘違いするほど前言を忘れて跳梁跋扈する輩が多い。関西電力の高浜原発が40年経過しているが、今回、福島第一原発事故後に40年とした原発寿命を20年延長することを原子力規制委員会が認めた。福島第一原発も40年経過していたが、当初計画を変更して延長稼働を決めたのは経済産業省が進めた電力自由化が背景にあった。電力各社は電力自由化に対して財務効率等を余儀なくされ、福島第一原発も津波対策などに再投資をすることを決断できなかった。

経済産業省が進めた電力自由化がグローバル経済に対する競争力を高めると言うのは建て前で、本音は政治家を金で籠絡して経済産業省の圧力を抗してきた電力会社に対する主導権を取り戻す目的であった。この為、電力会社が国策で進めてきた過剰な電力供給設備に対する配慮が電力自由化には欠けていた為に問題が生じている。地震大国に原発立地を推進させ、電力自由化の対する電力会社の財務体質の強化の為に無謀にも老朽化した原発の稼働延長を認めざるを得ない矛盾した政策で何時も被害を受けるのは国民だ。

安倍内閣は経済再生に賃金アップを掲げているが、グローバル競争に勝つために非雇用者制度を作ったのは誰だと言いたい。然も、企業の内部留保に批判を強めているが、誰が多額の内部留保ができる法人税引き下げを行ったのかと言いたい。企業が内部留保金を設備投資に回さないために内部留保金に対する課税の議論も出てきているが、ふざけるなと言いたい。日本は社会主義国家ではない。

昨今は政治家と官僚はマスメディアを利用した情報操作も行って来ており、日銀のマイナス金利が近い将来の年金システムを破壊することになることを言及した記事は少ない。政治家が無責任になったのには幾つかの理由があるが、そのひとつには官僚と同じ責任を取らなくても良い風潮が生まれたことだ。特に、政治家は選挙で勝てば禊になり、過去の言動と行動が免罪される様な風潮である。政治家の失敗に免罪符はない。何回選挙で当選して来ようが、過去に大きな誤りがあれば能力の問題なので直ちに議員を辞職するのが禊だ。

政策に対する無責任な生き方が出来た官僚に政治の助言を求めている今の政治家は無責任にならざるを得ない。記憶喪失症社会とは責任を取らなくてよい官僚から発し、今や政治家や企業経営者にまで害が及んでいる。

原子力発電に対する最終的な答えが出ていないのにも拘わらず途中で電力自由化を進めてより一層原発問題を複雑にした経済産業省の役人の無責任さは正に無謀な太平洋戦争に突入した馬鹿な昭和の軍人官僚と同じと思われる。

その官僚と政治家がデフレ脱却だけの処方箋で経済再生が可能と馬鹿な一つ覚えを呪文のように唱えて国民をだまし続けている。自らの矛盾した政策を棚に上げて賃金を上げない企業が悪い、設備投資しない企業が悪いと魔女狩りの様相を呈してきている。

この様な社会の行く末は、常に悪者を仕立て国民にバッシングさせることであり、舛添都知事の如く2年半の政策を評価することなしに、当初から分かっていた政治資金支出の問題を殊更取り上げて東京オリンピックを邪魔する都知事を魔女狩りにしたことは今後に起きる前哨戦だろう。スポーツに目を向けさせて国民を騙す手立ては独裁者の手口だが、無能な政治家が目指す道でもある。それにしても、田中角栄と言う政治家の汚職で政治と金に対する規制がその後の政治家をダメにした。その角栄が今再度脚光を浴びているとは恐れ入り屋の鬼子母神だ。

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