経済学のデフレと現場の感じ方の違い⑤

日本国民の生活にはデフレが良いかインフレが良いかを問う前に安倍政権のインフレ政策の方が良いと考える方が多いと思われるが、その理由は円安の輸出政策や日銀の金融政策ではなく、正に補助金が安倍政権を支えているのである。補助金の野放図のばら撒きによって国内の経済がどうにか下振れしないで均衡を保っているのである。良く言われる株高が景気が良くなると指摘されるが、株高で得た資本を企業が国内の投資に回したり、従業員の給与を増やせば指摘通りだが、現代は株高に比例するほど国内に投資を行わないし、従業員の給与などは増やさないどころか、効率経営の掛け声のもとに正規社員を減らし、雇用が安定しない非正規雇用者を増加させているので、経済に有効な消費を減らす行為ばかりを行っているので株高など国内的には大きな効果がない。

日本はバブル経済崩壊後に資産デフレが引き金に経済的なデフレに陥ったと指摘され続けている。その内、デフレの原因は人口減少だったと書いた本がベストセラーになり、次第に本質から遠のいてしまった感がする。本当はデフレになった原因は役人は別とすれば給与が上がらなくなったからだ。勿論、ニワトリが先か卵が先かの議論になってしまうのだが、大企業の内部留保金を考えると、給与を上げなくなったことが消費に影響し、デフレ状態を継続させている一因なのは間違いない。尤も、金融資本主義の導入で大企業も役員の報酬は何倍もになり、億ションなどの販売が好調になったが、所詮少数の人達の消費では日本経済全体に対する影響などたかが知れている。昔から貧乏人(失礼!)に金を使わせることが景気回復の近道と言われている。江戸時代は庶民も良く理解しており、落語の世界の如く「宵越しの金は持たぬ」は循環経済が自分の為になることが分かっていたのである。しかし、現代の経済は少数の金持ちを作るだけに邁進しており、それ以外の所得は下がるばかりである。正に、グローバル経済とは一物一価になるまで発展途上国の人達の給与は上がり、先進国の人達の給与は下がり続けて世界中の国が賃金でフラットになるまで続くことを意味する。

勿論、最近の技術開発が社会を全く更新する程の物ならば相転移と言う変化で新しい時代になって再度豊かさが戻る可能性もある。確かに、AI、ロボットなど過去からの技術だが今日的には飛躍的に進歩しているので、今は社会の相転移の苦しみかもしれない。しかし、IT技術が人の職場を奪うのだけを見る限り、今回の相転移は人にやさしい物とは言えないと思われる。ロボッテが人に変わるならば、ロボットに人頭税的な物を掛けて徴収しないと現在の仕組みでは国家が成り立たないのは自明だ。専門職がIT技術の発展で職を奪われているのを見ると、昨今のAI技術を考えれば、弁護士など記憶やルールに基づく専門家をAIに取って代わられると思われる。

社会はパラドックスの塊だから予期せないことの連続だが、デフレが解消しないのは人口減少などが原因ではなく、国民が意識的か無意識的か不明だが、否応なしと考えた方が良いかも入れないが、生活を維持するためにデフレを望んでいると言う事実だ。本音は円高でデフレならば生活は良いのかもしれない。日本ではベンチャーキャピタル投資が2000年をピークにその後減少し増加していない事でも成長に期待できないと考えている証拠と思える。

問題は安倍政権で行っている財政金融政策が将来の日本にツケとなって回ってくることに対する懸念だが、世界の経済を見ると日本だけの問題とはならずに金融資本主義が米国発のご破算で起きる可能性が高い。理由は30年以上もGDPも株価も上昇している米国なのにそれを否定するトランプ大統領が出現し、グローバル経済で成長している米国の仕組みを崩壊させ様としているからだ。中産階級目線で見れば日本国民も米国国民も同じと思われるが、米国は移民・不法移民がグローバル経済の成長分を吸収しているので、不法移民に反発が生じている。しかし、グローバル経済の縮図が米国内であるので、移民・不法移民を排斥すれば、確かに給与の高い中産層に雇用が戻るかもしれないが、その結果、GDPと株高が反転するとき株の暴落が起きる可能性が高い。

米国発の株の暴落で世界経済が混乱することなど考えたくもないが、トランプ大統領の出現で起こりえる確率は高まったので、それに対して日本国民が経済悪化に最低限対応するために必要なことは農産物などの食料の自給率を高めることと考える。農本主義者と指摘されるかもしれないが、もし大恐慌で万が一円が暴落したときを考慮すれば、国内で食料が自給できることで国民は生存できるので、安い海外の農産物の輸入などに惑わされずに自給率を高める事を願うばかりだ。現在のデフレで懸念することは農産物等の食料の自給率低下だけだ。

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