西五反田の土地で起きた詐欺事件

積水ハウスが西五反田の土地購入で詐欺にあって60億円もの大金を搾取された事件のニュースを見てやはりそうだったのかと言う思いであった。詐欺の舞台になった当該地には古い木造の旅館が建っている。ニュースでは4~5年前に営業を止めたと報道されていたが、最近まで営業を遣っていたのかと感慨深いものがある。当該旅館は親から相続した女性が経営しており、当社は今から37~38年前に向かい側の角地で共同開発を進めていたので、当該旅館に関しても共同開発を提案した経緯がある。当社は都心を中心に共同再開発事業を展開し、西五反田の共同マンションが開発案件の第1号であった。

地権者との面談で頻繁と当該地に行き来したので、目黒川を背にした古い旅館は共同開発に最適と思われた。しかし、何度も訪問しても現状を維持したいと言う所有者の気持ちを共同開発に切り返ることがかなわず断念した。当社は多くの開発案件を進めたが、多くは実現に到らないで終わった。その後年月が経ち、開発案件の場所に行くと全部と言って良い位に再開発されていた。当社の再開発の提案が呼び水になったのは確かであり、当社の手でなくても街づくりの切っ掛けになったことで社会に貢献できたと思ったものである。しかし、西五反田の木造旅館だけは当社が訪問した状態で年月が推移し、周辺の景観と時代に取り残された様に存在していたのには驚きもあり、感心もしていた。

当該旅館に関して再度当社が動いて見ようかと思ったのは、赤坂でゲストハウスを運営している知人が当該旅館に関心を持っており、彼の手法は外観を温存してゲストハウスに利用することでもあったので、売買や共同開発ではなく、現状を維持する利用の賃貸しなら可能性があるかもしれないと考えたからであった。後から思うと昨年に動けばよかったが、他の仕事が忙しくて動けたのは漸く今春だった。今年4月に土地建物謄本を取り付けたら直近で積水ハウスの売買予約の仮登記が記載されていた。遅かりしと昨年に動かなかったのを後悔したが、謄本を見ると仮登記には所有者から直接ではなく、間に会社が介在しており、然も当該敷地の一部には仮登記がなされていないのが不自然だった。勿論、所有者名義が同じ一族でも違っていたので、その一部に関しては同意が取れていない為に合意した大部分の土地にだけ売買予約の仮登記を付けたのかと推測していた。しかし、不動産に係る仕事に長年携わってきた私の直観では何か不自然であったが、一度に取引出来ないように仕組んで、時間稼ぎをする必要があったのかもしれない。当事者にしか分からない理由があったのだと思われる。

今回の詐欺事件で分かったことは所有者の女性に成りすました女を含む一味がパスポートを偽造して所有者本人になりすまして印鑑証明など公的書類を作成したことであった。所有者の女性が病気で入院していることの間隙を突いた詐欺事件だと推測するが、今日の科学技術の発達で容易くパスポートが偽造され、所有者本人に成りすますことが出来ることが分かり、今後は公的書類と言えども信用できないのかと思うと同時に取引には司法書士など多くの人達が絡んでいる事件なので、社会の正義に関しても希薄になりつつあるのかとも思った次第だ。何れにしても地面師の犯罪は科学技術と伴に本物と偽者が判別しにくくなってきたので、基本に戻り現場調査を行うと同時に、初心に帰って旨い話には気を付けることだと思った。当社案件は所有者の女性が亡くなり、相続が発生した様なので、相続税から考えると今回は売却になる可能性が高く、当社にとっては二度目の敗戦になると思われる。

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