建築基準法の改悪事例

建築基準法の緩和で民間の検査機関が誕生し、その後に構造計算で不正な建築物が発覚し、建築設計に関わる技術者の資格の面で改正が行われた。建築設計には、「意匠」、「構造」、「設備」に係る専門技術者によって業務が分担されている。過去の建築物の様に設備が受電・消防設備・給排水を考えれば良かった時代には、特に「設備専門」担当を置かずに一級建築士の設備担当で行えた時代であった。しかし、建築物に受電・給排水以外に空調設備、消防設備、ビル管理システム、屋内機械式駐車場設備など建築工事費に設備の占める割合が増大した昨今では、設備担当も電気、機械などを専攻した技術者でなければ対応できなくなり、当然に一級建築士の資格者ではない技術者が担当することになった。しかし、資格制度改悪後には、一定規模以上の建築物の設備を担当する技術者は一級建築士の資格が必要になった。この為、業界ではOBとなった一級建築士の設備担当の経歴を利用することでその場を凌いだが、問題はその後に起きてきた。中小設計の設備設計事務所には一級建築士の資格を持つ設備設計担当者が極端に不足しているといった状況だ。大企業しか見ない役人の馬鹿さ加減と建築士業界の行政追従と権利拡大の机上の空論だ。困るのは国民であり、規模の小さな建物しか扱えなくなった設備設計事務所だ。今後は多くの設備設計事務所が廃業を余儀なくされ、大手設計事務所や建設会社に仕事が集中してしまうことになる。中小の建築設計事務所も設備設計事務所がなくなれば、規模の大きな建築物は扱えなくなり、痛手だ。建築設計に意匠と構造は一体化したものだが、設備に関しては耐震性など以外に建築の知識より、電気と機械の専門知識が必要だ。電気と機械の専門知識と同じ様に建築知識を必要となると負担が大きくなり、建築設備に従事する人が少なくなる懸念がある。現実無視の事例を見るにつけ、日本は本当に今後も国際的に競争力を持つ国として歩んで行けるのか不安になる。制度改悪になった構造偽造事件も役人が招いた事で、反省も何もない。困った事だ。

またか!!

外壁診断の相談を受けていたアドバイザリー先の会社の資産管理担当者から用件が終わった後に当該建物に関してPM会社から窓先空地が取れていないと指摘があったことを話して来た。エンジニアリングレポートも作成された物件で、購入時にはレポートにも指摘事項がなかったと記憶していた。しかし、PM会社の内部調査の結果、窓先空地に関して疑わしい面が出てきたらしい。この為、資産管理担当は竣工図面等を確認した所、竣工図面自体が統一した仕様で作成されていなく、実施設計時の図面が混じっているので、指摘事項に関して竣工図面では確認できないと嘆いていた。この様な話を聞くたびに復かの思いが強い。今の社会は人の流動性が高くなったので、様々な職場に色々な経験を有した人達が集まっている。勿論、大手メーカーなどの物造りの現場では経験の継承が重要視されるので、転職して入社しても企業風土に合った考え方を今でも叩きこまれると推測される。同じ物造りでも不動産業界はメーカーとは似て非なるものなので、経験の継承の必要性が希薄である。尤も、メーカーも最近のデーター改竄などの報道を見ると、グローバル市場での競争激化でコスと納期などの厳しさで品質管理の面でモラルの欠如が増えてきた。一方、不動産業界は一攫千金の強者どもが参入する業界であるのでもともと玉石混交は否めないが、以前の社会ならば本物でなくては市場から退場させられた。しかし、今の社会は利益優先で猪突猛進しなければ生き残れないので足下しか見ないのが一般的になった。建築基準法の改正で建築確認申請の図面添付が緩和されたのと、確認認可が下りた後に図面を何度も変更してコストを下げる方法が一般的になった弊害が多くの建物で生じている。上記の指摘も違法を前提にしたのではなく、コスト削減で図面を変更している過程で施工現場に配布された最終図面が間違っていた可能性が高い。過去のブログでも同様な間違いが起きた建物に言及したが、2000年以降には同様な建物が日本全国に多く存在すると推定される。今回の様な事が起きるのは図面の変更だが、途中で間違いのチェック機能が働かなくなったのは竣工図面作成代を発注者がケチって請負業者負担にしたこともある。竣工図面を描かずに施工する現場にミスが起きるのは当然だ。最近TVなどで日本の物造りの素晴らしさを盛んに報道するが、自慢できるのは過去のケースだ。現在進行形や未来に関してはお寒い状況なのが現実だ。クールジャパンなど謳った経済産業省の進めたプロジェクトは全部失敗に帰したらしい。経産省のOBが今の連中は机上の空論で遣っているので失敗するのは当然だと厳しく指摘した。日本全体が何時の間にか机上の空論で物事を進める社会になり、間違いにも反省がない点に憂慮する。

ゴルフビジネス

私がゴルフビジネスに本格的取り組んだのはバブル経済崩壊後であった。㈱東拓企画一級建築士事務所の二代目社長として活動していた時に先代社長が関わったゴルフ場時代の人脈の縁であった。設計事務所としてはゴルフ場のクラブハウスの設計に関わったが、レジャー屋さんが開発する仕事の設計料は現金半分で残りは会員権で支払われた。ゴルフ場の用地買収が上手く運び完成すれば、会員権の価値が上がり儲けが増えたが、多くは用地買収でとん挫し、会員権は紙切れになった。一方、ゴルフ場の用地買収のビジネスは成功報酬であり、不動産の地上げだったので此方の方はマイナスにはならなかった。先代社長にとってはゴルフビジネスはリスクの多いものと理解していたらしく、積極的には拘わらなかった。ブログで急にゴルフビジネスに言及したのは、先代社長からアドバイスを頂いた会員権業者の宝ゴルフサービスの糟井会長が逝去されたことをご子息から告げられたからだ。私のゴルフビジネスは不良債権化したゴルフ場のデューデリジェンスであったが、スタッフには元ゴルフ場の支配人であった方もいたので、ゴルフ場のオペレーションも出来た。更に、名門コースのグリーンキーパーン経験者の方にも協力を得ていたので、コース管理も低価格で引き受けることが出来た。1997年にゴルフ場のデューデリジェンスのチームを結成し、当初は外資系から依頼を受けた会計コンサルティング会社の仕事であった。開発に数百億円掛けたゴルフ場がキャッシュフローで評価を算出すると数億円と言う金額になるのは悲惨であった。日本のゴルフ場は会員権ビジネスで成り立つシステムであったのが嫌になるほど痛感した。バブル経済崩壊後は多くの金融機関が多くのゴルフ場に融資し大部分が不良債権化していた。ゴルフ場はビルやマンションと違いオペレーションによっては追加の資金が必要であり、更に多額の預り金を有していたので経営支援の対象に成り得なかった。この為、不良債権処理の不動産のバルクセールでただ同然で外資系投資会社に多くのゴルフ場に対する債権が移った。外資系投資会社もゴルフ場に関しては債権処理に関して良い方法が出なかったが、その後に民事再生法の成立で多額の預託金を消滅することが認められたので、ゴルフ場の再生に向けて動き出した。この動きに相俟ってゴルフ場のデェーデリジェンスの仕事も急増し、現地調査を行わない机上の調査を含めると北海道から九州まで数十か所のゴルフ場のエンジニアリングレポートなどを作成した。キャッシュフローで不動産ンの価値を評価する手法がゴルフ場にも採用され、会員権の価値を等閑にしたことが今日のゴルフ場経営に悪影響を及ぼしている。勿論、バブル経済時代以降にゴルフ場を運営している人達がゴルフ場を箱庭の様なメンテナンスを常識化したことと立派過ぎるクラブハウスも経費面で問題が起きていた。何れにしても、人も物も一度贅沢をすると容易に戻れないと言う現実はゴルフ場経営には厳しかった。旅館ビジネスと同じで団体や企業接待の利用から個人利用に変わったのに切り替えが難しい業界でもあった。それにしても、ゴルフ場と会員権が表裏一体であることに気が付いていれば現在のゴルフ場ビジネスは資産価値を失わなかったと思われてならない。糟井会長の逝去に改めて考えた次第。合掌

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