四方田犬彦の"戒厳"を読んで思い出した記憶①

小説かノンフィクションか不明な本だが、購入動機は書評で立った1年しか滞在しなかった外国の昔のことを今頃になって執拗に書いたのか分からないと言う点と外国が韓国であったこと、更には本で書かれている時代に私も韓国に関わっていたことによる。遠い記憶、今から45年前の事だ。韓国は今年の3月に大統領の選挙があり、保守系の伊氏が当選したのだが、相当きわどい選挙だった。尤も、民主主義的な選挙によって選ばれた大統領の時代になって韓国も長いが、今から45年前の韓国は軍事政権の朴大統領が君臨していた。それが、"戒厳"の中でも書かれているが、朴大統領が部下のKCIAの親玉に暗殺され、その時に私も専門誌の記者として韓国と関わっていたので懐かしい記憶と今では想像がつかないと思われるが、北朝鮮と韓国が厳しく対峙していた時であったので様々な体験もした。朴大統領は過去の韓国の大統領の中では唯一私欲を持たずに国家の事だけを考えた政治家であった。勿論、北朝鮮と厳しい対立をしていたので、国内の治安に対しては必要以上に厳しく、若い世代が望んだ自由な民主主義を実現する余裕のない状況であった。軍事クーデターで政権を作った時には韓国はアフリカと同等の貧しさであり、朴大統領が日本から賠償金を取り付けてその資金を基に国家の経済基盤を整備し、漢江の奇跡と言われた経済成長を実現して国家を豊かにした。しかし、軍事政権時代の圧政だけに注目されて最後には非業の死を遂げたのには同情せざるを得ない。朴大統領の暗殺事件には当時の米国のカーター大統領の影響があったと思われる。敬虔なプロテスタントであったカーター大統領が韓国を訪問し、朴大統領に民主化を求めたのを時期尚早と拒絶したことがカーターの怒りを買ったと言われている。そのことが朴大統領に不満を持つ勢力に暗殺と言う手段を実行させる動機になったのは事実と思われる。朴政権は本人は精錬潔癖であったが、政権を構成する人達は金儲けに励み、ダーティな人物が多かった。(②に続く)

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