マンションに対する相続税評価の見直しについて

マンションに関して実勢価格と相続税の評価額が乖離しているので見直すとの記事を読んだ。マンションと一口に言っても建物の状況は様々であり、昨今マンション価格が高騰したので実勢価格の40%の評価を60%に引き上げるとの考え方には違和感がある。現行の基本的な相続税の評価の算定には、「建物」に関しては固定資産税評価額、「土地」に関しては路線価額を採用することになる。後者の土地に関しては接道や形状などのより路線価額を修正することになるが、路線価は毎年見直しが行われているので、実勢価格は何を指すのか分かり難い。投資以上の投機による乖離ならば住まいとして長く所有しているマンションを相続する被相続人にとっては理不尽な見直しである。今回国税庁のやり玉に挙がっているのは高層マンションだと推定するが、高層マンションの実勢価格と相続税評価額の乖離は高層マンションの維持管理の費用を考えると必要悪と認めないとスラム化する可能性もある。尤も、それを考慮したのが40%を60%への引き上げであり、それでも十分に維持管理の費用をねん出できるのとの見方かもしれないが。マンションデベロッパーにとっては高層マンションは大きな利益が得られるのだが、そもそも実勢価格自体が胡散臭いのである。高層化するほど区分所有建物に付帯する土地持ち分が少なくなるので、本来ならば資産的には現行の様な価格ではないのである。実勢価格と称するものが虚構の価格なのである。虚構の価格を造り上げたのは高層マンションに関しては維持経費と将来の建て替えに多額の資金が必要なためとも言える。一方、普通のマンションに関して言えば、現行の値上がりは異常であり、何れ価格は下がると推定されるので、マンションに対する評価の見直しは高層部分に限定した措置と思われる。高層マンションに関して言えば目立たなく節税商品として使えば今回の見直しに繋がらなくなったのにと思わざるを得ない。過去にワンルームマンションの購入に関してサラリーマンが資産を残せる措置税があったのだが、大々的に宣伝してワンルーム販売をする業者が出現した為に付帯する土地に関して節税できなくなり、所得税と相殺して資産を残す方法の価値が大幅に減少してしまった。その様な意味では高層マンションも今後は相続対策商品としては魅力が減少することになりそうだ。

サステナビリティで環境ビルに付加価値

「ESG」、「SDGs」などの企業評価に伴い不動産業界も環境ビルの建築やビルの省エネ改修工事に関心が高まっている。上場企業にとっては投資家が投資先の企業が取り組んでいる。「ESG」、「SDGs」を企業評価の一つにして来ている為に取り組まざるを得ないのと、特にプライム市場などの企業にとっては世界的にサステナビリティが求められる時代になり、入居ビルに関しても配慮せざるを得なくなっている。大手企業が入居対象とする大規模ビルは当然に環境ビル対応を進めているが、問題は中小のビルの行方である。特に、既存ビルの場合には省エネビルに改修する工事に関しても限界があり、投資金額に対する回収に関しても見通しは明るくない。また、中小ビルのテナントにその需要があるのかのそもそも論もある。勿論、中小ビルでも新築ならば環境ビルとは言わないが、それに準じた性能を持ったビルにする必要はあり、大規模ビルも含めて通常性能のビルと比較して工事費が高くなると見られるので問題は賃料の上昇に結び付けられるのかである。環境ビルの絶対数が少なければ需給バランスにより賃料に反映できると思われるが、基本的にはその時の景気の状況に左右されるので判断は難しい。省エネビルに関しては米国から認証制度が入ってきたもので、現在では幾つかの認証システムが存在する。認証基準は建築躯体、設備機能などがあり、一定の基準が満たされれば認証される評価方式である。環境ビルの話題になると思い出すのが40年前のインテリジェントビルに関してだ。当時、都心で再開発事業を進めていたが、投資資金の回収が出来るマンションを対象にしていた。その時に、港区虎ノ門の地主から再開発事業を依頼されたが、立地的にマンションではなくオフィスエリアでしたので分譲による資金回収に問題があった。特に、土地や借地権を売却して再開発事業に協力したいとの地権者が多かったこともあり、フロアの取得分が必要以上に多くなることが予想された。この為、区分所有の事務所の分譲の時代ではなったので、分譲できないフロアに関しては保有して長期的に返済するスキームの事業を考える必要があった。その課題を命じられた設計陣は当時米国で建築が始まったインテリジェントビルがあり、日本で造れば賃料に付加価値を付けられると考えた。結果的には、再開発事業の乗っ取りなどの被害があり事業の完成が遅れたが、バブル時代に完成したことにより嬉しい誤算が生じた。懐かしい思い出だ。環境ビルに関してもテナントが省エネの恩恵を受けると共に社員の健康を考慮した造りならば賃料に付加価値を付けることは可能と思われる。今は再開発事業から手を引いたが、もし継続していたならば環境ビルの建築を行っていたと感慨深いものがある。

日本の未来社会に必要な人口から逆算して少子化対策を考えるべきだ

ロボット、システムにAI導入、自動車の自動運転など近未来に一般的になる様々な人に代わる技術や人の作業を少なくする技術を見ると、今後の社会に必要な労働力の規模に関してどの程度なのかと考える。岸田政権は異次元の少子化対策と言いながら財源に対して積極的な活用に踏み込んでいないのを見ると、政治家も官僚も本音は人口を増やすことに意味がないと思っているのかもしれないと疑ってしまう。確かに、先進国は労働集約産業などは人件費の面で採算が合わないのでグローバルサウスと言われる国々に移転し、先進国の工場は付加価値の高い製品などを造るのに特化しており、高額なロボットの導入でも採算が合うので現実的には人手はいらない。特に、高速通信網があれば、工場の管理は工場内に居ることもないし、工場によっては海外にオペレーションを移しても生産が可能かと思われる。その様に考えると、年金の支払いを別にすれば、人は研究部門や営業部門、企画部門のホワイトカラーが大半でブルーカラーは限定した業務しか要らないとも思われる。この様な論を展開すると若い世代の支払いによって成り立っている年金は崩壊すると指摘されると思うが、ロボットやAIや自動運転技術に税金を課かすことによって年金資金を確保する事は可能と思われる。戦争などに必要な軍人もロボット化で人はオペレーション要員だけで良いことになり、生身の人間が戦う時代はなくなると思われる。戦争は何時の時代も経済力がある方が最終的には勝利するのであるが、未来社会に問題があるのは兵器産業及び重要な電子部品は国内に拠点がないと金だけあっても意味がない。この様に考えると経済安保の観点からは、国内に一定の工場が必要であり、非戦闘の食料自給率も不可欠と言える。国土が狭い日本では平面的也常温での生産には限界があるので立体的な農業用地や常温以外での生産も必要だが、その点から考えるとエネルギーの確保が重要と言える。自然エネルギーだけでは不十分なので核融合エネルギーの開発が待たれる。必要な労働力の問題が経済安保に発展してしまったので論点を戻すと、少子化問題を考えるには未来の社会の状況を推測する必要があり、少子化対策が功を奏しても子供が増えるのには時間を要するので、中間的には海外労働者の導入を増やす以外にないと思われる。この点で問題になるのは為替である。円高でなければ日本で働く意味が少ないと言うことである。適正な円安などと言っている学者や評論家は目の見えない者が象の一部分に触って全体を判断している様と同じだ。海外の多くを海外に移転した日本では円高の方がエネルギーや食糧、更に外国に支払っている技術料などを考えると円高が有利と言える。少子高齢化社会や経済安保には円高が必要なのだ。GDPの30%しかない輸出の為に円安政策を推進しているのは愚の骨頂だ。ロボット社会になればベーシックインカムが浮上するので、年金問題もその視点で考えれば良いことになる。少子化対策など笑止千万だ。

職業政治家が社会経済をダメにした

松下幸之助が政治家を育てるために「松下政経塾」を造った時には若かったこともあり理解できなかったが、最近の政治家の社会経済の経験不足を思うと分かってきた。尤も、松下政経塾が成功したかと言えば政治家を輩出したが中途半端に終わった感がある。松下幸之助が見届けることなく亡くなったことも松下政経塾が未完成であった理由とは思われる。松下政経塾に入った者は政治経済の勉強以外に商売などの心得や実践の指導を受けてて戸惑ったと聞く。しかし、その商売に係る指導に松下政経塾の設立の目的があったと思われる。松下幸之助は当時の政治家が社会経済について無知なのに良い政治が行えるわけがないと喝破したと思われる。その後の推移を見ると、秘書上がりの政治家や二世議員、官僚など社会経済に精通した人材でない議員が多くなり、松下幸之助の懸念が的中した。勿論、経済界も天下国家を考える国士的な財界人はいなくなり、自分の会社しか考えられない企業経営者が多くなったのも一層ひどい政治になった原因ではある。職業政治家は選挙に落ちると金銭的に厳しくなるので、選挙に落ちない事が目的となる。この様な政治家に良い政治が出来る訳がない。職業政治家が良いと言われたのは、企業経営者が議員になると利益誘導や汚職の問題が起きると懸念されたことにあるが、企業経営者は社会経済を知るので現実と遊離した政策は行わないので、今日的な非正規雇用など少子化を招いた政策など実施しなかったと思われる。30年以上も停滞している日本経済は机上の理論の官僚と労働組合を守る政党と自分の会社だけしか考えない経済人が作り出したものと言える。多額な国債発行の為に低金利を維持しなけれならないので正常な資本主義さえ壊してしまった。経済成長の為に馬鹿の一つ覚えのイノベーションを唱える様は新興宗教と見紛える。幾ら企業が頑張っても政治家が無能では社会経済は良くならない。最近の政治家は少子高齢化など忘れて経済防衛を標語にしている。岸田政権は異次元の少子化対策を取り上げているが、官僚などはロボットとAIの時代に昔の様な人口がもたらす経済成長など考えてはいないと思われるので、絵に描いた餅になる可能性が高い。

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