平成21年4月1日から特定保守製品について宅建業者に告知義務等が課せられることになった。この制度は多発したガス給湯器に拘わる死亡事故に起因したものであるが、この事故に関しては宅建業者が一任的に情報伝達に対して責務を負うものではないと思料される。最近の事例では本末転倒の様な制度改革が多い。その一つに構造偽造事件後の建築設計士に対する研修制度の導入などである。構造偽造事件は犯罪である。建築士が知識不足で間違って起こしたものではない。それが何故研修制度に繋がるか不明である。役人の天下り先の確保としか見えないのが実情である。構造偽造事件は建築確認申請手続きを民間委託にしたことに起因しているので、本来ならば改善の必要があるのは確認申請手続きを代行する会社に対する査察や職員に対する研修制度の創設であろう。それが建築士の研修制度など建築設計事務所の対する監視強化となった背景には責任転嫁と役人の天下り先の確保、更には建築報酬のアップを考えた建築士関係団体の思惑が一致して違った方向で解決を図ったのである。今回の特定保守製品の告知義務を宅建業者にさせることに関しては否定しないが、付帯設備の説明などは従来行なってきているので余り意味がないと考えられる。もちろん、仲介時に耐用年数が経過している機器を設置している場合には警告にはなると思うが、賃借賃料や売買価格が安い場合には無視される話である。是正できる権限を有してこそ効果が出ると思われるが、その点には言及していない。住宅の付帯設備の問題は、売買物件より賃貸物件に関してと思うが、既にガス漏れ警報機や火災報知器設置などを義務付けているので、常識的には十分と言えるものである。このため、欠陥商品の事故ならメーカーが責任を取るべきだし、老朽化した付帯設備を交換しないで貸していて事故が起きたなら貸主か管理会社が責任を取るべきであるので、殊更宅建業者に義務を課す必要はない筈である。逆に、責任の所在が複雑化することにより、責任の希薄が進むだけである。住宅の瑕疵担保保険に関しても同様である。保険でカバーできる事で細心の注意が払われなくなる恐れもあるのである。消費者庁が創設される事になったが、権限を持たない役所の寄せ集めは現場が混乱するだけで役に立たない。最近の行政の動きを見ていると枝葉末節の類の改善で、本質的な問題の改善に何等役立っていない。このため、本質のすり替えの危険性が高まっていることに注意を払うべきと思料する。