磯子石炭火力発電所を見学して

電源開発㈱の磯子石炭火力発電所を見学する機会を得た。見学の主役は伊東元重・東大教授であったので、私は随行者の一人として参加した。今回の磯子石炭火力発電所の見学には他の人達と違った意味があった。それは私が若い時に公共事業とエネルギー関係の専門誌を発行する会社を仲間と共同で経営していたので、取材で何度も鉄鋼ビル時代の電源開発を訪問していたし、旧磯子石炭火力発電所を見学していたのである。今から30年近く前に家業を継ぐために転職し、エネルギー事業とは無縁の仕事に入った。尤も、入社数年前から非常勤取締役に就任していたので、業務自体は兼務していた時期もある。しかし、代表取締役社長に就任してからは、昔の専門誌仲間とは酒を飲む程度になり、一時期は全くエネルギー事業とは無縁であった。それが、経済産業省に勤務していた友人の技官から自宅兼共同住宅の購入の相談を受けてから彼の専門分野の原子力に関しては時々情報を得ていた。特に、3.11の東日本大地震による福島原子力第一発電所の事故の時には、米国の友人からメルトダウンしているから逃げろと言う情報が入ったので、友人の技官に対して状況を確認するために連絡したが容易に捕まらず、漸く連絡が取れたら彼自身が政府の事故対策の渦中にいたことが分かり、危険な状況を脱したことを知った。

この為、福島原発事故以降は今後の日本の電力状況やエネルギー政策に再び関心が行くようになり、情報を収集するようになった。以前はバブル経済崩壊後の不良債権処理に時間を取られ、更には不動産ファンドのアドバイザリーとして不良債権ビジネスに参加するなど忙しい日々を過ごしてきたので、異業種交流会などには積極的には参加してこなかったのだが、東日本大地震以降は積極的に参加するようになり、交流会の知人を通して伊東先生とも面識を得た。今回、伊藤先生を囲む異業種交流会に電源開発の役員さんも参加したこともあり、今回の磯子石炭火力発電所見学となった次第だ。石炭は地球エネルギーとしては一番豊富であり、CO2の問題はあるものの世界中で石炭火力の技術開発が進められてきており、日本の石炭火力は環境性能を含め最先端の技術力を誇っている。確かに、磯子火力の隣の東京電力の新横浜LNG火力の煙突には煙(水蒸気)が出ているが、驚いた事には磯子石炭火力発電所の煙突からは煙が出ていなかった。磯子火力は1号機(60万KW)、2号機(60万KW)の合計120万KWを運転しているが、石炭は船からの輸送も含めてすべて密閉されており、石炭はサイロに保管されて発電に使用されるに際してはミルで粉末状に粉砕されてボイラーの燃料に使用されている。特に、タワー型のボイラーは圧巻であり、発電効率は世界最高効率を実現しているとのことである。環境性能から言えば、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)はガス火力並みのクリーンさを実現している。この為、石炭火力としての問題は温暖化の原因と言われるNO2だが、この排出量もインドなど比較すると各段に低い数値とのことだ。原子力発電は多くのリスクを抱えていることを考えると、ベース電源としては資源埋蔵量からも石炭火力が世界中ではウエイトを占めることは間違い。この為、日本の石炭火力の技術を輸出することが環境問題に貢献することになるものと見られ、次世代の石炭ガス発電所も視野に入っているとも言われ、今後の成り行きに注目される。勿論、北米のシェールガス輸入もあり、日本のエネルギー政策の舵取りに関心を持つ必要がある。

何れにしても、久しぶりに石炭火力発電所の見学は技術開発の進歩を見る思いであり、発電所のコントロール室も旧発電所に見た環境とは段違いであった。仕事とは違うが、エネルギー施設を見学することも当社の事業であるビル・マンションの管理には必要なことと改めて気づかされた。

中国の防空識別圏設定の深読み

中国の防空識別圏設定に関する日本のマスメディアの報道を見ると、中国と言う国は他国の事を何も考えない中華思想で凝り固まっており、外交は頗る幼稚としか思えなくなる。しかし、それは本当なのだろうか。今回の件を流された情報から分析すると違った側面が見えてくる。

先ず、今回の防空識別圏の設定は、中国に好意的な政権の台湾や韓国に知らされず、然も台湾と韓国の領域を重複した防空識別圏の設定であることだ。中国が尖閣諸島を領土とする主張に基づく防空識別圏設定ならば、現在友好的な台湾の馬政権と韓国の朴政権と軋轢を起す様な防空識別圏の設定を行わなかったのではないかと言うことだ。次の事は未確認情報の類だが、習国家主席が今回の防空識別圏の設定に関して日本とは資源争いから戦略的争いに変わったと発言したことである。

一般的に誤解されていることだが、中国と日本の尖閣諸島周辺の資源の共同開発の合意は、領土問題ではなく、大陸棚の延長に関してのものであった。日本のマスメディアは尖閣諸島に対しては、中国は海洋資源の存在を知ってから領土を主張するようになった論調が主流である。この日本の見方に対して中国は腹が立っていたのかもしれない。日米が現在設定している防空識別圏は中国にとっては喉元に突き付けられた刃と思っているのかもしれない。長く外国勢力に領土を蹂躙された民族にしか分からない防空概念だ。

鄧小平以前の周恩来、毛沢東も尖閣諸島に関しては将来の知恵に委ねたいと発言したことを捉えて日本のマスメディアは、中国が尖閣諸島を領土として主張し始めたのは中国が経済力を増して日本に経済的に依存しなくても良くなったからだとの見方を取っている。しかし、尖閣諸島問題が大きくクローズアップしたのは石原慎太郎前知事が米国のNYで購入発言をおこなってからであり、その沈静化を図るために国有化した民主党の野田前首相の行為からであった。尖閣諸島問題を先鋭化したのは中国側ではなかったことを理解しないと今回の防空識別圏の設定も理解できないことになる。

尤も、米国のコントロール下に置かれている日本のマスメディアの報道を見聞きして判断したのでは、日中対立を煽られ、中国を敵視するようになる。中国国防部の報道官が、今回の防空識別圏の設定はいかなる国に脅威を与えるものではないと発言したことも重視すべきだ。これに対して、日本のマスメディアは米国のB52の飛行や日本の自衛隊の飛行で中国がスクランブルを掛けてこなかったのは、広範囲の設定でレーダー網が不備であるからと指摘し、民間航空機の飛行の安全性を煽って不安視する情報を流している。この様なデマ記事を読むと憤りを感じる。今の中国国力でレーダー網を完備していなくて防空識別圏を設定する訳がないのである。月に無人探査機を送ろうとす中国に対しての技術力のなさを強調した歪曲した報道は何をか況やである。

中国の今回の防空識別圏の設定は尖閣諸島を巡る日中間の騒動に対して再度将来の知恵に委ねる一石かもしれないと考えてみるのも面白いかもしれない。短絡的か意図的な報道で日中間を煽るマスメディアの報道は戦前の大陸進出を彷彿させるものなので要注意が必要だ。

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