岡本隆司氏が書いた"中国「反日」の源流"を読んで
中国に偏見を持った歴史を知らない若い人に薦めたい1冊である。この本は明の時代の倭寇から中国の「反日」の源流があることを書いている。現代の中国の軍備拡張は過去に他国から植民地同様に扱われ、日本軍に国土を蹂躙された苦い経験からなので、歴史を学ばない若い人が米国と同様に中国の軍拡に反対しても意味がない。本を読むと、今の中国指導者層が懸念しているのは、中国の国体の存在が日本などと違い、明と清の時代と変わらず、人民と国家に一体感がない事であるのが分かる。国家と人民が一体化でないのは中国人に刻まれたDNAであり、短期間には変えられないと思われる。中国の指導者にとって米国的民主主義を受け入れるには国家と人民の一体化を確立する必要があり、それには国の豊かさが必要と考えていると推定できる。江沢民が進めた愛国反日教育も国家と人民の一体感を何とか構築して外国の干渉から国を守る意図があったと考えられる。この本を読むと、中国指導者の防衛ラインは明の時代にあることも分かり、朝貢していた琉球を独立国として保護の対象としていた中国からすれば、尖閣諸島は明治時代に日本に簒奪された領土になる。このため、今後とも日本と中国は尖閣諸島で争いが起きる事は明白であり、尖閣諸島防衛に際しては、現在の様に米国の軍事力に頼るのか、独自に中国に対抗する海上防衛力を強化するかで議論が分かれると思われる。中国としては、江沢民前国家主席の様に日本が米国の支配下に置かれて独自の軍事力を強化しない方を望む勢力と、胡錦濤国家主席の様に日本が米国の支配から脱し、真のアジアの国家として欧米諸国と対抗できるパートナーになることを望む勢力が存在すると考えられる。欧米諸国からすれば、経済大国の日本と中国が手を結ぶより、歴史的な経緯から対抗することを期待していると思われ、日本国内に反中国の声が大きくなる事を喜んでいる。アジア経済を支配したい米国などは本音では日中の軋轢で双方が足の引っ張り合いをすることを望んでいるはずだ。日本は過去150年の歴史を振り返り、中国との理想的な関係の構築に注力し、二度と武力で争う愚は犯さないことを肝に銘じるべきだ。隣国の中国が大国化するのは地政学的に日本に有利に働くことを忘れてはならない。