出藍の誉れ!!

サムスンと聞いて分からない人は少ないだろう。韓国の世界的企業だ。書店で眼に止まった一冊の本「サムスンの孤独な帝王 李健煕」を購入した。父親の時代に韓国のトップ企業になり、二代目の息子「李健煕」が世界的な企業に成長させた。グループ企業から見れば日本のソニーやパナソニックを凌駕している。何故この本に興味を持ったかと言えば、私が20代後半に日本と韓国の経済交流情報の収集の仕事をしていたからである。サムスン、漢字では三星と書くが、第二次世界大戦後に韓国で生まれた財閥企業の一つである。創業者は李秉喆 で厳しい人と聞いていた。韓国の財閥企業の中でサムスンは日本の歴史や日本企業を研究して成長した事は聞いていたが、今回購入した本を読んで改めて多くの事を日本から学び、今では日本企業を凌駕し反面教師としているといるのが分かった。私が韓国経済を学んだ時代は正に軍事政権絶頂期である朴正煕が大統領の時であり、「漢江の奇跡」と言われた経済成長を遂げている時であった。然も、その朴大統領が暗殺され、後継を巡ってクーデターが起こり、全斗煥が大統領に就いた激動の数年間だった。奇しくもこの時代に私の大学の同窓が韓国に販売した機器のメンテナンスに渡韓していたのだが、彼は正に朴正煕の暗殺時にソウルにいてホテルに缶詰となった。学窓は今では時効だからと話したのは、彼はKCIAの盗聴設備のメンテナンスで渡韓していたとのことであった。日本と韓国は色々な事で戦後も交流していた事が理解できる話だ。サムスンも日本企業に追いつき追い越せと社員に号令を掛けて何度もの危機を乗り越えて大成長した。正に日本から見れば「出藍の誉れ」であろう。サムソンは戦前の日本の財閥企業と似ている。逆に現在の日本企業は財閥時代の社員が居なくなり、戦後教育の社員が経営者となったのだが、それと伴にサムスンが羨望した企業風土や社員の姿が消えた様だ。その事が、現在のサムスンの経営者「李健煕」から日本企業は怖くないと言われてしまったのであろう。サムスンと言う企業は実は昔の日本企業に近いのかもしれない。勿論、サムスンも成果主義や事業の選択と集中を採用して急激なグローバル化の経済に対応してきたが、企業の根底に流れる意識は常に韓国及び韓国民に置いており、日本企業の様にグローバル化の中で米国方式に盲従し、国家及び国民を蔑ろにしたのとは基本的に違うと思われる。人を大事にする企業は困難を乗り越えて進んでいる。同様に人の弱さと強さを熟知した経営者によりサムスンはひたすら変化に対する対応を続けている企業と推察できる。"事業(企業)は人なり"を痛感する本であった。
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