消費税増税の時期の是非

安倍政府は消費税増税について来年四月の実施時期を断行すべきか繰り延べすべきかの判断に迫られている。有識者会議の意見などを参考に最終的には安倍首相が決断することになるが、消費税増税で思い出すのは今から16年前の自民党の故橋本龍太郎首相の増税決断である。この時にも旧社会党の村山首相の消費税増税決議を受けての橋本首相の実施決断であった。今回は民主党の野田首相の消費税増税決議を受けて安倍首相の実施決断と歴史は繰り返すかと思われるほど状況は似ている。勿論、消費税増税の決断における経済情勢も判断材料的にもデジャビ感がある。

今回の決断で懸念されるのは前回同様に国内の指標で決める判断と言える。前回は実施を決めた1997年4月の後にタイから始まった同年7月のアジア通貨危機がその後の日本経済の運命を決めてしまった。橋本元首相は死ぬまで財務官僚に騙されたと言っていたらしいが、財務官僚も海外から起きた問題までは予想しえなかったものと推測できる。

今回の国内経済は橋本元首相の時より良くないのは明らかだが、それ以上に怖いのは中国経済のバブル崩壊や欧州経済の動向である。又、韓国経済の動向も気になる点である。消費税の増税後に世界経済を脅かす危機が生じたら前回の状況の比ではない。最良の方法は1%ずつ段階的に様子を見ながら引き上げる方法だが、この意見に関しては導入コストがかかると言う事で財務官僚は否定的な見方を取っている。しかし、前回と違ってIT社会になりプログラム社会では消費税アップは既に織り込み済みと思われるので、導入コスト云々には疑問がある。

何れにしても、前回の橋本前首相は実施後にアジア通貨危機が起こったので不運としか言いようがないが、今回の安倍首相の運は如何なるものであろうか。天は味方ををしてくれるのであろうか。如何なる意見を聞こうが増税実施の判断にはならない。国民が願うのは安倍首相に天が運を授けているかである。企業経営者が良く指摘することだが、経営者は能力だけでは選べないと言う点である。確か記憶では、経団連会長になり名声を博した土光敏夫が石川島播磨重工業(IHI)か東芝の社長を選ぶときの話だが、能力的には同等の二人であるが、最終的に運の強い者を選んだことである。経営者として能力を搾り取るほど考えた後の決断には運が必要だという事であろう。大手企業ならば社員の家族を含めて何十万人もの生活者がいる。その人たちの運命を社長の決断で決まってしまう不条理な世界がある。況してや、一国の宰相ともなれば更に決断には重みが加わる。消費税増税は必要だが、問題は橋本元首相の嘆きではなく、宰相の決断には運が必要だという事である。この様に述べると、二度の宰相に就く人物が運がないとは言えないと反論されるかもしれないが、天が国民を奈落の底に引きずる宰相を選んだかもしれないことも歴史を見ると否定できない。二度の国会選挙で自民党を勝たした国民はまな板の鯉である。橋本元首相の悪夢が再来しない様に祈るだけだ。

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