東京都文京区に建築中であったファミリーマンションに関して避難階段の設置問題で東京都建築審査会では違法と判断して確認認可を取り消したことに対しての東京地裁の裁判で「不服請求棄却」の判決が出た。建築基準法は柔軟性があると言うか解釈余地がある法律なので過去には行政庁の建築主事に依って解釈が異なるケースもあり、提出先が違えば許可されないケースもあった。この為、設計事務所や建設会社やデベロッパーは行政庁に事前に相談して設計企画を進めたものであった。規制緩和で建築確認申請などが民間の会社で行えるようになり、従来の行政庁に申請するより建築基準法に関して柔軟性がある民間会社に申請が多くなったのは仕方がないのだが、民間会社となれば経営と言う観点から審査も判断することになり、違法性に関してグレーな建物も増えてきた。今回の取り壊し命令を出されたマンションも民間会社に建築確認申請を提出して審査を通過したものであり、確かに駐車場の出入通路を避難通路と設計したのは、1Fに到る急勾配を考えると審査が甘いと言えば甘かったのかもしれない。デベロッパーなどは購入土地価格の高かった分を建築で補填しようとする傾向があり、問題建築が出現する。勿論、建築確認審査が行政庁の専管業務の時代には、グレーな設計企画で建物を造ることは難しかったので、土地自体に作為した方法が多かった。例としては、マンションなどの駐車場の土地を建物完成後に転売して検査済み証を得てから違法建築になるケース、建築敷地の敷地の一部を借地し、建物完成後に借地部分を所有者に返すケースであった。悪質なケースもあり、建築確認申請提出の図面と違う図面で平気で建築してしまう建築主の存在だ。流石に設計士は違法となるので、施工監理は受けないで建築工事に関しては知らないとの立場を取った。これが通用した社会的な背景として経済的損失を理由に完成目前の建物に関しては、取り壊し命令を出さない慣習だった。今回のマンションに関して改善などで妥協することなく取り壊し命令となったのには、近年の災害の発生の頻度もあり、住む人の安全を無視した設計に鉄槌が降ろされたと思われる。何時大災害が起きるかもしれない日本列島にあって建築基準法法上の避難階段や消防法関係の設備に関しては従前より厳しい対応となることが予想される。心すべきことと思われる。