読書は専らAmazon kindle をタブレットとスマフォで行っているが、過去には家やオフィスに読むスピードに追い付かずに積読だったが、最近はAmazon kindle ライブラリに保管している状態だ。読書が購入に追い付かないのだが、登山に係る本は興味が強いのか速読出来て滞留がない。今年に入って二人のプロ登山家に関する本を読んだ。一人は遭難して亡くなったので、その登山家と縁が深い人の書いた本と、もう一つの本は、8000m級の14座を全て登頂した登山家が書いたものだ。後者の方は書名が"登山の哲学"であったのに興味が引かれて購入した。両方ともkindle版だ。最初に読んだのはヒマラヤの無酸素登山で遭難した方の伝記的な本だ。他大学の登山クラブに入り山行を経験し、南米の高峰の登山に成功したのを切っ掛けにプロ登山家になり、SNSを駆使した実況登山の草分けの人だった。私は他大学のクラブに入れるとは知らなかったが、コンサルタントをしている会社の女子社員と早稲田大学のクラブの話をしていた時に、彼女は私はクラブだけですと言った意味がその時には分からなかった。後で他大学のクラブには入れること理解したのだが、確かに入学した大学にないクラブに入りたい時には便利だとは思うものの、変わった考え方でなければ無理ではないかと思った。その記憶があったので、多少変わった人であったのかと思いながら本を読み進めたのだが、遭難した登山家の方は演出的な才能が有り、物語を作るのに長けた人と思われた。一方、日本人で初めて8000m級の14座すべての登頂に成功した方は、低学年で祖父の影響で登山を始め、高校、大学の登山部で経験を豊富に積んだ人だ。大学時代からヒマラヤの遠征隊に参加し、登山経験に関しては申し分にない経験者だ。その上、欧州の登山家に誘われて少数グループの登山を経験した事が当時の8000m級の登山を目指す上で欠かせない技術と医療的な知識を得ている点だ。更に、その技術は天気予報に及び当時の最先端の登山技術を取得するチャンスを得たことだ。遭難した登山家は無酸素登山を標榜してエベレストなど8000m級の登山を目指したのだが、14座登頂に成功した登山家の方と比べて無謀と言える登山技術だけで挑戦を続けた姿を理解できなかった。著者もそれを知りたくて伝記的な作品を書いているが、最後に自殺的な登山で遭難した理由に関しては当然に推測の域を出ていないので、謎を遺した結末にならざるを得なかった。正に、科学的な思考がない典型的な日本人のカミカゼ登山と言える。一方、科学的な思考で14座の登頂に成功した方も山頂途中の脳梗塞や雪崩に巻き込まれての遭難も経験しており、科学を持ってしても避けることが出来ない自然の怖さを表現している。彼より先に14座の登頂を成功できる二人の方が遭難死しているとのことで運の良さを指摘する人が多いそうだが、彼自身は運を否定している。8000m級の14座の登頂成功の過程では運などで片付けられない要件があると思われる。それが日本人の欠ける科学的思考だと推定する。今回の登山の本を読んで、以前に知人から聞いたアフリカでの鉱山開発を思い出した。知人はフランスの会社と合同でアフリカのウラン鉱山の開発に参加したのだが、その時に思い知らされたのはフランスの会社の植民地経営の知識を生かした計画だそうだ。彼の属した日本企業は食料などは現地調達条件でで現地に送られたそうだが、鉱山から近い村まで200km以上もあるので到底無理な事だった様だ。日本人には科学的な思考に欠けると言ったが、置き換えると想像力の不足ともいえる。科学的な思考(=想像力)を駆使しても襲い掛かる自然の驚異は運などの一言で片づけられない深い問題が横たわっている。太平洋戦争で想像力の欠如がもたらした犠牲を戦後も同様に継承している姿を見ると余りにも強大な自然の力を知るゆえに科学的な思考が発達しなかったのかと天を見上げるしかない。