選挙民が当たり前のように聞いて不思議に思わない議員選挙に立候補した人達の「お願いします」の言葉がある。議員と言う職は、選挙民のために犠牲的な精神で働くから税金で報酬なるものが支払われるのである。自己犠牲に「お願いします」と言う言葉が出るのは誰が考えても可笑しいのである。「お願いします」は自分のための言葉であるから、この様な言葉を言って当選して議員になった人に期待できる訳がないと思うのは私一人だけであろうか。私の亡父は若い頃地方議員の職にあった。4年毎の地方議員や地方首長の選挙に出た時の亡父の演説では一度も「お願いします」と頭を下げた事はなかった。身銭を切って選挙を行い、議員として村を良くする活動をするのだから「お願いします」は支援者が言う言葉であり、立候補者が言う言葉ではないとの自説を断固として曲げなかった。後年、同郷の国会議員が選挙の時に夫婦して土下座したTV報道を目にした亡父の悲しげな哀れむ様な顔を今でも忘れられない。亡父は気性が荒い上に正論を唱えたので反対者も多く、然も若いときに農地解放運動などの活動を行った事が旧地主階級から嫌われて政治家としては燃焼し切れなかった面がある。しかし、生涯を通して弱者に対して優しく、地方政治に対する情熱は尊敬に値するものであった。私は今の時代こそ亡父のような議員立候補者が出て来る事を期待したいものである。選挙で「お願いします」と言う言葉は聞きたくない。