米国の大統領選挙は多くの予想に反してトランプ氏が勝利した。この多くの予想に反してとは大手のマスコミが報道したことを鵜呑みにしての事だ。英国のEU離脱の国民投票の結果に対しても同様だが、大手のマスコミの事前の予想と違った結果が出ると愚かな選択をしたと大手のマスコミの予想と違った行動を取った人々を蔑む。マスコミに従事する多くの人々は何時から国民の声が聞こえなくなったのかと歴史を振り返ると、何時の時代にも国民の声など聞いていなかったことが分かる。国民を間違った方向に誘導していたのは大手のマスメディアだった。
大手のマスメディアが国民の声と違った立場になるのは少し考えると理解できる。資本主義の社会では大手のメディアが購読料だけでは運営費と利益がでないので、殆どのメスメディアが広告収入で成り立っている事実である。広告収入は企業と政府から得ているのである。
マスメディア批判は今回の本筋でないので本題に戻るが、ITの発達でグローバル化が進められて来た結果、世界中でフラット化現象が起きており、この流れは先進国の国民にとっては好ましい事ではない事実だ。経済と言う本質を考えると、過去には違いが利益を産み出していたことが分かる。違いは時間軸の中で解消されるのだが、それまでは早く気が付いた企業や人が利益を享受できたのである。しかし、IT時代は情報が瞬時に世界中を駆け巡るので、違いだけでは利益を手にできなくなった。勿論、早く情報を得た企業や人には「特許」と言う独占的利益を享受できるシステムが構築されているのだが、問題はこの特許と言う制限がフラットな世界に向かう中で格差を生み出し、社会の歪みを作り出している存在でもある。
英国のEU離脱、米国のトランプ氏の大統領選挙の勝利に関しては、全てにおいて半周遅れで歩んでいる日本には理解できないものと映っている。しかし、良く考えると、今日のグローバル経済や金融資本主義をリードして来たのは英国と米国と言うことを忘れてはならない。その英国と米国で反グローバルが起きたことは日本でも今後起きてくるという事だ。その根拠は安倍ノミクスで日本経済は復興しないし、グローバル時代の中で円安輸出主導で解決できる様な単純な社会ではなくなったことだ。TPP反対の米国大統領が出現することは日本にとって首の皮一枚残ったことになる。地方経済は工場の海外移転や公共事業の削減で、今や農業・林業・漁業から生じる所得を無視できなくなっているからだ。TPPは地方経済の最後の砦を失うことになり、政府が試算している様なTPP効果の経済成長などフラットに向かっている世界では望むべくもないからだ。
さて、来年にトランプ氏が大統領になると何が変わるかだが、過去を振り返ると日米の経済摩擦は労働者の支持を得ている民主党大統領の時に起きている。日本の多くの国民はマスメディアで誤魔化されているので、米国は民主党の大統領の時の方が日本にとって良いと勘違いしてる。日米貿易摩擦は民主党のケネディ大統領の時に起きたことを忘れてはならない。今回のトランプ氏で気になるのは、民主党大統領の様な他国への干渉の発言が目立つ事だが、この発言の裏には民主党の大統領の様な他国への米国制度の押し付けではなく、保護主義と考えた方が良いと思われる。そうなると、来年は円高になることも覚悟する必要があり、観光客によるインバウンド効果も減少する可能性が高い。しかし、円高は地方経済にとっては悪いことではない。過去の様に円高で海外に工場移転した時代は終わったので、多くの資源に対する海外依存の高い日本にとってはプラスの面が多い。円安が日本経済を再生すると言う考え方は、内需が70%の現代においては間違っていると言わざるを得ない。
長々と書いてきたが経済理論的には冗長度が高い程良いと言われるので正しいと自負しているが、読んできた人にとっては結論が見えず飽きてきた頃と思うので、この辺で街の不動産屋の考えを纏めると、経済の拡大ではなく、少子高齢化社会に向けて経済の縮小に向けて地域をブロックとして自立する経済を構築する方向に向かうと推定できる。中央政府による統治ではなく、地域をブロックして相互に依存する統治の仕方である。インフラ自体もコンパクトにする必要がある。その点から言えば、リニアなどは時代遅れの過剰投資であり、将来のお荷物になる可能性が高い。