アジア通貨危機は正に日本の金融機関にとっては金融機関の主導(共同債権買取機構)で行ってきた不良債権処理を国の主導(整理回収機構)に転換することになった事件である。また、同時に日本の金融機関の不良債権処理がフェイズⅢになったので自分たちの出番と海外のハゲタカファンドが日本に大挙して上陸してきたのである。
1997年~2005年には金融機関の不良債権処理も一段落し、大都市などでは不動産価格も上昇したが、その後2007年に米国発のサブプライムローンによるリーマンショックが起きたので、国内の景気はデフレ脱却には到らなかった。しかし、1998年はウィンドウズ98が発売され、インターネットのブームが起こり、世界経済はグローバル経済に急速にシフトして行くことになる。国内に目を奪われると見えなくなることだが、バブル経済崩壊後でも少しも業績に影響を受けなかった産業がある。自動車産業である。また、国内の消費の低迷から海外の販売に注力した企業は業績を拡大し、売上的には大幅に増加している。更に、国内でもデフレに対応した低価格販売を推進した企業は大きく成長している。
バブル経済真っただ中のGDPは320兆円、バブル経済崩壊後の2000年のGDPは500兆円を超えている。GDPは増加してるのにデフレは続いているのは何故か。金融資本主義の導入で勤労者の対して利益を還元しないで株主に還元する経済システムになったことも一つの要因だが、最大の要因は価格を破壊するデフレ企業に金融機関が積極的に貸出しているからだ。
飲食店舗に目を向けると、バブル経済崩壊前は開店資金が多額なので容易には出店できなかった。しかし、リース会社の丸ごと店舗などにより資金が無くても出店が可能になり、飲食店舗業界は供給過剰になった。その結果、価格破壊が起きてしまった。このブログを読んでいる方は価格破壊が起きて何が悪いと言われると思うが、金融緩和でお金が市場に回されるほどデフレ企業の投資が盛んになり、デフレ企業同士の競争が激化し、更にデフレになる悪循環が起きていることを言いたいのである。
翻って、付加価値の高い物を生産したり提供すれば良いと反論が出ると思うが、少子高齢化社会の到来で社会医療保険の崩壊も指摘されている中で、国民はお金を使わないと言う現実だ。安倍政権は金持ちを作ればベンチャー企業に投資し、新たな企業の出現で雇用も増えるので、格差社会でも十分に景気回復は可能と判断しているが、少数の金持ちが使うお金より、普通の人達が使う金が経済的には遥かに大きいことに気が付いていない。基本的に金持ちはケチだから金を蓄えたのであることを忘れている。
この様に書き進めると悲観論者の様に見えるが、私は悲観論者ではない。私が言いたいのは現在のデフレは国内の金融機関の貸出先の問題とグローバル経済の構造的な要因で起きているので、金融政策や財政政策を行ってもインフレにならないという事である。
(次のブログに続く)