不動産の今昔その2-③

不動産は証券化で動産的な要素が加わり投資資産として扱い安くなり、また開発業者も購入者にリスクを転嫁できることになり、景気回復に国民の金を使わせるシナリオとなっている。国債同様に不動産証券化も小口化を推進する規制緩和が進んでおり、正に相続税の強化と相俟って国民の不動産に対する投資意欲は盛んになった感がある。タイトルが今昔なので比較する必要があると言われそうだが、本質から見れば手持ちの現金以外に借入して不動産開発ないしは証券化商品を購入した場合のリスクは変わらない。尤も、株やFXの様に信用取引による購入システムは不動産取引ではないので売買で実体以上に損失を被ることはないのだが、問題は不動産リートや私募ファンドの借入金比率である。配当率を上げるには借入比率を高めることなので、急激に担保評価が下がった場合のリスクは大きい。マンションを主体とするリートと私募ファンドは相続対策でアパート・マンションが需給を無視して建築ラッシュとなったので近い将来は入居率が下がる可能性があり、賃料の下落圧力が高まると担保評価に問題が出る。オフィスビルも建築ラッシュが続いており、今後はマンション・アパートと同様に担保評価で困ることは目に見えている。不動産証券化の出現によって不動産の流動化は高まったが、一方不動産の賃貸収入で生計を立てている個人や企業は需給を無視した開発の煽りを食らう事になる。20年以上前の経済バブル崩壊では不動産の価値は大幅に下落したが、不動産が証券化で金融商品となった今日では過去の様な大幅な下落があるかと言うと、正に事例として不動産の証券化の本家である米国を参考にすることが出来る。結論で言えば大幅な下落は起きる。下落率はエリアによって異なったが、一番下落率が低かったNYでも半値の2割引きになった。ちなみに、米国の不動産はリーマンショック後の暴落後に景気回復や外国人の投資に伴って上昇しているが、中国人や中国企業の投資が急激に落ちたので、最近は危うい状況にあると言われる。日本も海外投資家の影響を受ける様になったので、米国の動きが今後は参考になると思われる。

<次号に続く>

不動産の今昔その2-②

前回、都内のファミリーマンション販売で大手不動産会社のシェアが高まり、これまでの様な中小不動産による価格破壊が消えつつあると書いたが、マンション価格が高くなりすぎて中小では手が出せなくなったのも事実だ。マーケットがグローバル経済になり、買い手が国内に留まらないと言う現象も中小不動産会社にとってはリスクを取れないのも事実だ。過去の経験など生かせないと言う現今の不動産について今昔などと書いて比較しても意味がないと言われそうだが、物事の本質を考えると何も変わっていないのに気づく。良くマーケティングで考えろと言う言葉を目にするが、マーケティングとは何かと言えば消費者の心を把握するという事になり、消費者目線で考えろで周知の事実だ。今の時代に殊更強調されるのは従来の手法では物が売れなくなったことや集客出来なくなったことだが、それは情報化の時代になって製品の情報が溢れている事やデフレ経済で一律的に給与が上がらなくなり、然も所得格差が拡大したことの社会的要因が背景に存在する。今後はデザイン思考が必要との表現も世界に稀に見る中流社会が壊れて誰もが右倣えであった時代が終わり、個別的な需要に対応せざるを得なくなったに過ぎない。本質を見る眼がなければ時代に翻弄され、大したことでもない事を尊重してしまう事になりかねない。本質的な目で民泊を見ると二つの意図が見えてくる。一つは、円安で海外から観光客が増加し、宿泊施設が足りないので、個人の住居やマンションを宿泊施設の代替として利用する事だが、これは要するに宿泊施設の非正規雇用者同様の為替変動を意識しての調整弁であると言える。二つには、聡明な方は直ぐに理解したと思うが、少子高齢化社会で過剰になりつつある住宅を維持し、且つ住宅は景気対策の重要な柱なので需要減を避けるため方策だ。この様な政策に企業が飛びつくと火傷することになる。

次に、視野を世界に拡大すると、実体経済の数倍の資金が運用先を探して市場を翻弄している世界的なバブル経済に直面する。日本の不動産も海外の投資資金を考慮しなければ需給判断に間違いが生じることになるが、海外の投資資金は逃げ足も速いので、安易にのるとやはり怪我をすることになる。尤も、不動産リートや私募ファンドの発行が増大し、オフィスビル建築などはテナント需給を無視した状況を呈しており、海外の投資資金以前に問題を抱えている。更に、不動産業界は相続対策商品ならお客が付くと言われ、住居用の投資マンションが供給過剰になってきている。金融庁がアパートローンの過剰貸し出しに警告を発したが、金融機関も貸出先がないので相続対象商品に融資が集中してしまう弊害が出てきている。今の社会は過剰包装と同じく本質を間違わせる様な見掛けを変えて如何にも新しい時代に合った商品の様に見せる技術が横行している。正に、詐欺師にとっては垂涎な社会と化している。

<次回に続く>

不動産の今昔その2ー①

かなり以前に「不動産の今昔」を書いた記憶があるのでタイトルにその2と書きました。情報化時代と言われて気が付くとふた昔前の事であり、今はIOTから更にAI、VR、AR、MRと単なる情報のスピード化やデータ保有量でなくなりました。確かに、情報化以前の時代に教育を受けた世代と情報化時代に入ってから教育を受けた世代とは、世代間ギャップ以上に多くの点で違いがあると思われますが、前者を時間軸にゆとりを持っていた世代と後者を時間軸が短くなった世代と表現を変えてみると、両者の優劣は一概に判断できないと考えられます。良く考えると、10年ひと昔が、5年ひと昔、更に3年ひと昔と事業の有効性は年々短くなってきていますが、正に情報化のなせる業であり、簡単に世界中の情報が一瞬の間に把握できることによる後発の有利さと断言できます。大学教育も私の時代には10年一日の授業でも教授の職が確保されていた時代でしたが、今は新しい技術が次々と生まれ、つい最近まで実現には長い時間が掛る考えられていた量子コンピュータも実現するなど正に2045年に起きる技術的特異点(シンギュラリティ)を予想される今日では、誰も自分の地位を保証できるものではなくなりつつあります。しかし、人の頭(知能)は技術と比較して成長していないと言われ、現代の様に時間軸が早いと逆に退化するのではないかと危惧されます。従いまして、時間に追われた世代でなく、逆に時間を持て余した世代の私が最近の不動産の動きについて過去と比較して分析することは無駄でもない様な気がしますので言及したいと思います。テーマはランダム的になることを許容していただきますが、先ずは都内のファミリーマンション販売に関してです。大手が販売戸数を増やし、今では価格さえもコントロール出来る程にシェアを拡大してきていることに驚いています。過去には大京というマンション販売会社があり、バブル経済時代に国内と海外の過剰投資で銀行管理に置かれた時に、取引先の金融機関から就任した社長がマンション価格をコントロールする為に販売シェアを拡大する戦略を採用したことがありました。当時はマンション販売はメーカーの生産・販売とは違うので出来る訳がないと思われ、実際に拡大路線が裏目となり、最終的にはオリックスによる救済を受けて系列企業になりました。その時の記憶がありましたので、都内のファミリーマンション販売が大手不動産によって寡占化が進み、価格さえも左右するかもしれない現状には驚きを隠せません。この背景には都内のマンション用地の不足があると思われ、それが続く限りは大手不動産のシェアが拡大し、販売価格にも影響が出ると思われます。

<次回に続く>

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