バブル経済崩壊後の貸しビルについても思ったことだが、今回の金融危機による企業のコスト削減の矢面に立たされる貸しビルの所有者は所有ビルの適正な価値を認識する必要があると考える。確かに、米国では貸しビルに関して総合的な環境評価システムなどによって格付けの様な事を行っている。借り手側では価値あるビルを安く借りたいだろうが、貸し手側としては景気が悪化しても他のビルと根拠のない競争を行わないで済む様にビルに対する適正な評価による賃料水準を確立する必要がある。都内のビルに関して言えば、貸し手の努力では改善されない立地場所や建築時期に関係した固定資産税の様な税金があるので、その事だけでも賃料格差は生じるのである。況してや、計画修繕の実施度や運営管理の違いによる建物の価値などは当然に賃料に反映されて然るべきものである。この様な情報を借り手側に伝えることにより、安ければ良いと言う考えを変えてもらう必要がある。勿論、建物の価値は関係なく安く借りたいと言う借り手に対しては、不動産業界にある格言「お金がないは客じゃない」で対応すれば良いのである。そう言えば、米国のロスアンゼルスではビルの賃貸収入の減少を補填するためにビルの壁に大きな広告を掲示する様になったが、入居者にとっては窓が広告で覆われるなどの環境悪化に陥り、裁判沙汰になっているらしい。何時の時代もそうだが、安くすれば良いと言う訳ではない。賃料を叩いて入居すればそれなりのサービスしか得られないのは世の中の道理である。不景気になっても建築コストや取得価額による賃料限界があることを借り手側も認識すべきである。但し、景気が良いからと言って借り手側に根拠のない無謀な賃料値上げを行った貸し手に関しては配慮する必要はないと考える。借り手も貸し手もお互いに信頼関係を構築して共存共栄でなければ貸しビル業など成り立たない。