内装の一部をカットした低価格マンション販売は本当に安いのか

長谷工が、「下駄箱」、「電子レンジ」、「棚」などの設置を省いて販売価格を10-15%下げたマンションの売れ行きが好調との記事を見た。記事にはマンション業界に新風を吹き込んだと書かれていたが、良く考えると 仕様変更だから購入者は別に安い買い物であったわけではない。確かに、最初から設置されていると自由度が低いので、自由度を高める効果はあると思うが、この販売は錯覚商法の類であるので、マンション業界に新風と言う程でもない。この販売方式を極端化すれば中国のマンション販売と同様なスケルトン仕様に到る事になる。日本の不動産は外国と比較すると土地が高いので、マンション販売業者は建築工事費で利益を出す傾向が強い。このため、内装部分を減らす事は減益となりかねないために、従来は内装のオプションが可能位に止めていた。しかし、購入者にとってはマンションの内装仕上げはそれでも個人で発注するよりは間違いなく安いことを忘れると後で多額の出費を招く事になる。また、後から仕上げようとしても規格品で納まらない場合もあり、思っているより簡単ではない。我々業界の話だが、工事見積りを取って価格交渉に入ると、仕様を変更して価格を下げるケースが多いが、実は仕様変更しての価格の引き下げは発注主が得した訳ではない。今回のマンション販売も同様で、付帯設備の一部を削除しているのであるから別に購入者は得した訳ではないので、そのまま使用するのであれば問題ないが、購入後に自分で付帯設備を設置する考えならば購入前に業者から見積りを取るか、設計事務所にコンサルタント料を支払っても意見を聞いたほうが良いと思われる。本来ならば、購入者の希望を入れて内装仕上げを行なう販売方法がベターであり、勝手に付帯設備を削除して販売価格が安いと思わせるのは錯覚商法以外のなにものでもない。

手前味噌

東京都の千代田区ではビル内に分煙エリアを設置する場合に補助金を出すと言う記事が掲載されていた。手前味噌になるが、当社が管理している虎ノ門ビルでは、既に10年以上前に1階エントランスの空きスペースに分煙エリアに排気ファンとダクトを設置してテナントの従業員に提供している。千代田区は他の地方自治体に先駆けて路上の喫煙禁止を条例で定めるなど環境や健康などに対して前向きな役所である。千代田区の政策を考えると、以前書いた神奈川県の飲食店等に対する禁煙条例には能がないのに驚かされる。企業も役所も人材が必要であることは分かるが、千代田区は人材が揃っているのであろう。当社の分煙エリアの設置も全部の管理ビルで実施できているわけではない。問題は、オーナーの理解と分煙エリアの確保が可能かどうかが決め手となる。最近のファンドの所有物件や大手企業の貸ビルなどを見ると、見た目は良いが利用者を考えての配慮は少ないと思われる。確かに、新しい大規模ビルは最新の省エネ設備などを導入しているが、逆に無駄な一面も相当あるのが分かる。貸しビル業はサービス業である事を理解しているビルのオーナーは少ない。高い賃料を取りたいならばサービス体制や省エネ設備を強化する必要があるのに、単に賃貸市場の相場しか見ていない。当社の管理ビルは共同開発した区分所有建物が多いのだが、最近は区分所有建物にもファンドのオーナーが増えてきて収益を上げるためにサービスの基本である管理費の削減を要求して来るので質の良いサービスを維持するのが難しくなってきている。ファンドのオーナーの所有期間は長くて5年であるので、無責任な遣り方が多い。今回の百年に一度の大不況では、貸ビル業がサービス業と認識していないオーナーのビルは空き室が目立つようになると予測できる。

規制緩和後のタクシー運転手の運転技能低下の怖さ

全国的には分からないが、少なくても東京都内のタクシー運転手の運転技術は危ないほど低下した。特に、タクシーの運転手は地方出身者が増えており、幹線道路さえ覚えていない方が多いので、お客が道を知らないと遠回りの料金が請求される事になる。規制緩和の前には、タクシー運転手の資格は普通乗用車の2種免許が必要であった。私も自動車免許を取得する時に自動車学校で2種免許の試験について聞いた事があるが、バックでクランクを走行する技術など初心者の私にとっては驚くべき運転技術であった。しかし、現在では5年くらい事故や違反がなければタクシードライバーにばれると言う事を聞いた。悪く言えば、ペーパードライバーでもなれるということである。また、東京の様な交通が混雑しない田舎の運転経験でも都内のタクシードライバーになれるのである。尤も、最近の車にはカーナビが付いているので道を知らなくても問題ないだろうと反論する方がいるかもしれないが、その様な者は自分でカーナビを使って運転した事がない人と思われる。カーナビは便利だが、所詮有通の利かない機械である。規制前のタクシードライバーは経験で裏道や渋滞の場所、距離が遠いが渋滞を避けられる方法など知っていたので、急いでいる時には何度も助かったものである。しかし、今のタクシードライバーにその様なことは期待できない。タクシードライバーはプロの職場でなくなったからである。タクシー業界の規制緩和は、競争原理主義を導入して料金をリーズナブルにすることと、失業対策を狙ったものと推測される。ところが、実際にはタクシードライバーの生活が厳しくなり、その上タクシーの事故率が高くなっただけである。この理由は、表面的な規制緩和だけで根本的な問題を避けたからである。他と同様、タクシー運転手も小泉政権時代の薄っぺらな似非構造改革の犠牲と言える。経営者だけが潤ってタクシードライバーだけが割りを喰う改革であったからである。この結果、今日、安全性の面で問題が浮上しているが、それ以上に問題なのは個人タクシーの運手手に年齢制限がなく、自主廃業しない限りは営業できる事である。本来、規制緩和とは、利用者に便利な様にすることであると考えられるが、その事(タクシー営業の自由度)に関しては何等規制緩和していなく、利用者は不便を蒙っているのである。小泉政権の似非改革は国民の為におこなったのではなく「百害あって一利なし」である。

道州制の導入で行政組織のスリム化と国会議員・県議会議員の大幅削減が実現可能に

市町村の合併を見ると、正に行政組織のスリム化と議員数の大幅削減が実現している。ニュース記者や評論家が国会議員数の定数の適正さに言及する時に国民一人当りの議員数で日本は決して議員数は多くないと指摘しているが、この判断は必要条件だけで十分条件に言及していない。然るに、十分条件とは議員一人当りに係る報酬・経費総額はどうかということである。以前にも指摘した事だが、国会議員や地方議員の数は人口に対して決められている。戦前には井戸塀政治家と言う言葉のとおり、議員職はボランティアの性格が大きかった。戦後も高度成長時代前は議員の報酬は国会議員は知らないが、地方議員は日当制であったので、議員数が多くても財政負担は少なかったのである。それが何時の間にか月給制となり、無用な視察旅行が増え、財政に多くの負担を掛けるような制度に改悪してしまったのである。また、公務員においても然りである。何時の間にか大企業の優良企業並みの水準になり、公務員としての行政サービスの意義を考えない安定だけを求める職員が増え、財政難を引き起こしている。公務員の給料は日本の全ての労働者の報酬の平均以下であるのが望ましい。給料が安くても行政の仕事に関わりたいと言う有意な人を職員として採用するべきと考えある。良く給料が安いと悪い事をすると指摘する人がいるが、全くナンセンスな意見である。また、政治家に関してもお金が掛かると言うが、これに関しても遣り方次第と思える。国会議員に関して言えば、「報酬」の他に、「公的助成金」、「秘書報酬」、「政策費」など多額な費用を受領しているのである。個人献金も受けられるので現在でも多すぎると思われ、お金が掛かる政治活動しなければ当選しない議員など必要でないのである。大分前に政治改革を行なったが、この時には田中角栄と言う金権政治家の事だけを考慮したため、クリーンだけが強調されて政治家の活動に多額の資金を与え、財政負担がましただけであった。強欲な政治家共はそれでも足りない嘯いて贅沢な暮らしをしている。市町村合併の内、県議会議員の定数だけが削減されない問題は残ったので、道州制の導入では国会議員の削減を含めて議論する必要がある。なお、行政組織も然りである。農水省の様に農業人口が劇的に減少し、自給率も40%を割ったのに役人の数や出先機関の削減が行なわれていない現実がある。行政組織もフラット化を進め、忙しい部署と暇な部署の人的交流が出来るような人材と組織つくりを行なう必要がある。この様な変更は、道州制導入の様な一大イベントで行なわなければ出来ないと考えられ、道州制の導入は絶好の機会である。

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