日本と米国の経済対策の違い
米国はリーマンショック後の金融危機に対する経済対策を見ると日本のバブル経済崩壊後の経済対策を教訓としてデフレ経済に陥らない政策を採用しているのが分かる。今年が大統領選挙の年なので特に景気回復に向けての対策が色々と打ち出されるものと思われる。米国がリーマンショック後に行ったのは金利の引き下げとドル安政策であった。又、財政の出動も可能な限り行った。同時に大手自動車会社GMの救済であった。オバマ政権は途中で議会が共和党に過半数を奪われるなど政策を実行するには厳しい環境におかれたが、それでも米国経済はドル安で自動車業界が息を吹き返して来ており、最悪な状態には陥らないで済んでいる。尤も、ドル安政策で物価の上昇は続いており、一方で住宅価格はの下げはとまっていないし、失業率の改善は十分ではないので、国民の不満は強い。然し乍ら、バブル経済崩壊後の日本のちぐはぐな経済政策と不運な推移と比較すると、金融危機と言う広域的な問題と経済バブル崩壊と言う局地的な問題の大きな違いがあるが、経済危機に対する対応の違いには驚かされると同時に現行の政策決定の仕組みを変えないと日本は再生できないことが良く理解できる。参考までに、日本のバブル経済崩壊後の動向を振り返ると、1994年のバブル経済崩壊後の翌年の1995年に阪神淡路大地震が起きて円高になった事が不運の始まりだったと思われる。然も、この円高を避ける為に東南アジアに工場移転したのだが、1997年には訳の分からないアジア通貨危機が起き、日本企業の円高回避のアジア迂回輸出のシステムが崩壊した。同時に、1997年に何を間違えたかバブル経済崩壊などで企業が業績を回復していないのに消費税を5%引き上げた。更に、2001年にデフレ経済に陥り、税収などが大幅に落ち込んでいる時に時価会計・減損会計を導入した。日本はバブル経済崩壊後の1994年~2001年の8年間において景気対策を行うどころかデフレ経済になる対策を相次いで実施し、今日の日本経済崩壊の原因を作り続けた。東日本大震災と二次被害の福島原発事故の政府の対応を見る限り、日本は終わったと考える人が多いと思われる。米国と日本の違いを指摘するのは簡単である。米国には強力な指導者がおり、日本にはその存在すら見えないと言うことだ。正に、官僚政治が行われており、その官僚政治は部分最適の実行と省庁間の縄張り争いで組織横断的な問題の解決能力が欠如している為である。勿論、日本に人材がいない訳ではない。日本にとって救いなのは、人材がいないのは政治家と役人の世界だけであり、IT情報化時代になって見える化が進み、政治家も役人も昔の様に国民に隠して勝手には出来難くなったことである。何れにしても、米国もリーマンショック後から経済が立ち直った訳ではなく、今後も悪戦苦闘が続くと思われるが、表面的に見る限りは日本の様な間違った政策を取っていないことは確かだ。
AIJ投資顧問の問題は日本人のリスク管理の考え方に帰結
独立系のAIJ投資顧問が中小企業の年金資金を運用して2000億円を消失した記事を見たときに、中小企業が良く独立系の投資顧問を信用して預けたと思ったが、この投資顧問会社のスタッフの殆どが元野村證券の社員であった事を知り、またかと思った。日本人は失敗の責任逃れる為に、誰もが結果責任を問えない対象を選択するのが一般的になっている。会社の人事なども同様に世間で有名大学の学生を取ることで責任を回避する。勿論、有名大学の学生を採用すれば、5人に3人は仕事が出来るが、二流大学の学生の場合は、5人に1人しか仕事が出来ないと言うデータを盲信して採用しているのを聞いたことがある。会社の将来に関わる新入社員の採用に人事担当者が面接重視でなく、自分の責任回避の採用を進めているのでは企業の将来はない。然し、日本の場合には全ての選択基準が人物や企業の内容を判断してでなく、有名大学出身か大企業かと言う表面的なものに左右されている。AIJ投資顧問に中小企業の年金資金担当が騙されたのも推測だが、天下の野村證券出身だからと思われる。マスコミも野村グループが年間に支払う広告料は膨大になるので、野村證券の不祥事や運用の失敗などに関しては記事にしないか埋め記事類で大きくは掲載しない。この為に、一般の人は野村證券の成功の凄さだけが脳裏に焼きついており、元社員の誰もがスーパーマンと錯覚していると思われる。特に、リーマンブラザーズのスタッフを採用して運用面の強化などの記事を眼にしていると、野村證券のOBの投資顧問会社にも大きな期待を寄せる素地が出来る。私も大きな口は叩けない失敗を過去にしている。私の場合は、大手銀行の外為担当の長いキャリアを持ち、米国NYで大手銀行の子会社の米国証券会社や米国投資信託会社の社長まで登りつめた方と友人を介して知り合いになり、彼が帰国して始めた為替取引のファンド運用で騙された。この人物はキャリアに相当する実務経験がなかったと同時に仕組みさえ良く分かっていなかった。その上、最初から逃げられるように自分の立場を置くなど、無責任極まりない人物であった。私自身不動産業界は長いので人を見る目を持っている心算であったが、業界が違えば一般的な日本人と同様に有名大学、大手企業の出身と言う肩書きに惑わされることを改めて学んだ。今から思えば、我々の世代で日本の有名大学を卒業して外資系の金融機関に長く勤務した知人は、同じ日本人でありながら学歴や企業で仕事の依頼先を選択しなかった事を思い出した。この方は米国勤務も経験し、その間にスタンフォード大学のMBAも習得している人であった。典型的な資本主義の米国企業で鍛えられたので、学歴や肩書きに左右されない目を養ったのであろう。彼が米国企業に学んでいた時代の日本は社会主義的な要素を持ち、経済成長で次第に豊かになり、マスコミに与えられた記事だけを読んでいた為に資本主義の厳しさが欠如してしまったのであろう。それがバブル経済が崩壊し、デフレ経済となり、小泉改革で戦前の様な資本主義社会が出現してきたにも拘らず、能天気な有名大学と大手企業の盲信だけが組織に残り、依然としてリスク管理が甘いのであろう。野村證券の資産運用などバブル経済後に立ち上げた1兆円ファンドが5年も立たずに元本が50%を切った事実を知っていれば、野村證券のOBの投資顧問会社だからと言って信頼しなかったと思われる。尤も、リーマンブラザーズの社員雇用で運用面の強化の記事を読んだことがAIJ投資顧問に対する委託に繋がっているかもしれないが、その前にリーマンブラザーズは運用面で失敗して破綻した事を忘れた報いが野村證券にも現在の経営難となって及んでいる。何れにしても、未だ日本社会に根付いている有名大学と大手企業でリスク管理を考える習慣を変えないとグローバル社会では生き残れない。ちなみに、AIJ投資顧問の預かり資金の移動は詐欺的な行為と思われるが、運用自体に元本保証はないと思われるので、刑事罰が問えるかどうかが今後の問題と思われる。