金融機関はメガも地方も設備投資案件が少なく、現在は専ら相続対策案件融資が主流になっている。女性専用シェアハウスは相続対策と言うよりは資産作りの商品として企画されたと推定されるが、問題は事業運営会社の予想を超えた購入希望者が殺到した(?)為に、入居率などを無視して拡大路線に突き進んだことも破たんの一因と思われる。卵が先か鶏が先かの議論になるが、スルガ銀行が女性専用のシェアハウス融資に積極的に取り組んだ結果が業績の急拡大を誘引し、事業運営会社も嬉しい誤算が続いたとも考えられる。尤も、高利回りのサブリース商品ならば購入希望者も多いと推定されるが、なぜ高利回りが実現できるかを分析すれば、事業運営会社の破たんによる被害者に成らなかった筈だ。スルガ銀行の融資には米国のサブプライムローンと同様に購入者の調査資料が改竄されて融資が実行されたとの報道もあるが、この様な状況は資産インフレ時には起きることであり、資産処分を前提にした融資の特徴だ。しかし、現在の日本は立地場所に関係がない一様の不動産の値上がりなど期待することは出来ないので、何の根拠で無謀な融資に走ったのかだ。米国のサブプライムローンは長い間、資産上昇がなかった為に急激に起きた資産インフレを過信して過っての日本の様に破たんした不動産ローンは売却で貸付金を回収できると突き進んだ結果がリーマンショックを引き起こした。同様に、スルガ銀行の「かぼちゃの馬車」融資事件は資産デフレが続き、融資も保証協会の経験しか有していない世代が最近のインカムゲインよりキャピタルゲインを重視する風潮に踊った姿が浮かび上がる。特に、サブリースの支払いに関しては20年以上前の経済バブル崩壊後にサブリース裁判によって支払金額の変更が認められたこともあり、完全に保証された制度でもない。勿論、サブリースは経済バブル崩壊後にもアパート・マンションなどでは新築5年を目途にサブリース会社の有利なシステムで復活し、バブル経済時代の不良債権処理後にはオフォスビルなどにもサブリースが目立つようになった。サブリースが成立するのには高い入居率と賃借料の差額が必要であり、オフィスビルなどには適さないビジネスモデルと考えられていたが、資産デフレが続いて世代交代も起き、且つ金融業界も低収益に陥った中での日銀の金融緩和政策により、不動産投資に誰もが目を向けた結果、偽物と本物の区別が付かなくなった。否、デジタル経済で時間軸が早くなったにも拘わらず、長期的な考えが必要な不動産投資に関して無責任になったと言うべき現象が起きたと考えられる。
(続く)