サステナビリティで環境ビルに付加価値

「ESG」、「SDGs」などの企業評価に伴い不動産業界も環境ビルの建築やビルの省エネ改修工事に関心が高まっている。上場企業にとっては投資家が投資先の企業が取り組んでいる。「ESG」、「SDGs」を企業評価の一つにして来ている為に取り組まざるを得ないのと、特にプライム市場などの企業にとっては世界的にサステナビリティが求められる時代になり、入居ビルに関しても配慮せざるを得なくなっている。大手企業が入居対象とする大規模ビルは当然に環境ビル対応を進めているが、問題は中小のビルの行方である。特に、既存ビルの場合には省エネビルに改修する工事に関しても限界があり、投資金額に対する回収に関しても見通しは明るくない。また、中小ビルのテナントにその需要があるのかのそもそも論もある。勿論、中小ビルでも新築ならば環境ビルとは言わないが、それに準じた性能を持ったビルにする必要はあり、大規模ビルも含めて通常性能のビルと比較して工事費が高くなると見られるので問題は賃料の上昇に結び付けられるのかである。環境ビルの絶対数が少なければ需給バランスにより賃料に反映できると思われるが、基本的にはその時の景気の状況に左右されるので判断は難しい。省エネビルに関しては米国から認証制度が入ってきたもので、現在では幾つかの認証システムが存在する。認証基準は建築躯体、設備機能などがあり、一定の基準が満たされれば認証される評価方式である。環境ビルの話題になると思い出すのが40年前のインテリジェントビルに関してだ。当時、都心で再開発事業を進めていたが、投資資金の回収が出来るマンションを対象にしていた。その時に、港区虎ノ門の地主から再開発事業を依頼されたが、立地的にマンションではなくオフィスエリアでしたので分譲による資金回収に問題があった。特に、土地や借地権を売却して再開発事業に協力したいとの地権者が多かったこともあり、フロアの取得分が必要以上に多くなることが予想された。この為、区分所有の事務所の分譲の時代ではなったので、分譲できないフロアに関しては保有して長期的に返済するスキームの事業を考える必要があった。その課題を命じられた設計陣は当時米国で建築が始まったインテリジェントビルがあり、日本で造れば賃料に付加価値を付けられると考えた。結果的には、再開発事業の乗っ取りなどの被害があり事業の完成が遅れたが、バブル時代に完成したことにより嬉しい誤算が生じた。懐かしい思い出だ。環境ビルに関してもテナントが省エネの恩恵を受けると共に社員の健康を考慮した造りならば賃料に付加価値を付けることは可能と思われる。今は再開発事業から手を引いたが、もし継続していたならば環境ビルの建築を行っていたと感慨深いものがある。

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