20年前の経済バブル時の東京の地価の上昇と今回の地価の上昇について見ると大きな相違がある。前回の時は都内の全ての地価が上昇したのだが、今回の上昇は値下がり過ぎた地価に対する反動的側面を持つ上昇であると思える。尤も、銀座の一部や青山・表参道エリアに関しては前回のバブル時以上の価格となったが、大部分は土地バブルとは言えない程度の上昇である。銀座や表参道の土地の上昇の原因は有名ブランド品の会社の出店に伴ったもので、その出店がその後の不動産会社による思惑投資へと拡大した結果の上昇と言える。しかし、単なる物販業者が借りられる賃料設定の土地価格でないので、限定的な土地バブルで済んだと言える。ちなみに、マンションの販売価格で見ると、前回のバブル時は西麻布で1坪2,500万円の高値まで上昇した。しかし、今回の販売価格を見ると、都内の一等地で1坪当り450万円程度である。尤も、10年前は1坪当り250万円であったので80%も上昇していると指摘する人がいるかもしれないが、この250万円の販売価格はバブル経済前の今より低い所得水準であった1980年頃と同じである。下がり過ぎた分を考慮しないとバブルであるかどうかの判断は出来ないのである。では事務所賃料の方はどうかと言えば、この場合も丸の内・八重洲・赤坂などの新築高層ビルの賃料が大幅に上昇して前回のバブル経済時点と同様な賃料水準となったのは確かである。しかし、既存ビルや大部分のエリアでは前回のバブル初期(1987年)の賃料水準まで上昇したのは少ない。特に、大手企業はリストラを含め固定経費の削減に邁進してきたので、前回のバブル時と比較にならないほど高い賃料を吸収でき事を考えると賃料バブルとはなっていないと言える。このため、今回は金融庁が土地バブルを懸念して不動産に対する融資規制をするレベルではないのに行なった事に疑問を持たざるを得ない。翻って、住居地区は兎も角、商業地区の土地価格に関しては行政が介入すべきでなく需給に任せるべきである。前回のバブル時もそうであったが、規制のタイミングの悪さで全てを駄目にしている。景気回復の遅れも含めてここ20年は政冶・行政の失政で苦しめられている。今回も然りであるので、地価は今後下落するなどの虚言に振り回されないことである。