ユーハイムのゲーテの詩の朗読コンテスト

お菓子のバームクーヘンで有名なユーハイム主催の「第30回ゲーテの詩の朗読会」に今年も一般審査員として参加することが出来た。1982年にコンテストが開始されて今年で30回目を迎えるそうだ。30年も続いている割には意外と知られていなく、コンテスト参加者もお菓子の事で検索していたらコンテストのことが分かり応募した方が多い。私はゴルフの縁で河本社長夫妻と親しくさせて頂いているので、20年以上前からコンテストの事を知り一般審査員として毎年楽しみにして参加している。本コンテストはゲーテの誕生日「8月28日」の前後の土曜日に毎年開催されてきているが、30年の歩みの中では社内で開催の是非が何度も議論されて来たことを聞いた。会社としては昨今の利益主義の観点から言えば、社名を高める有効な宣伝となるイベントを開催した方が得であり、文化事業の側面を持つコンテストなど金融資本主義の中では評価されなくなっているのが実情だ。しかし、河本社長は社内におけるコンテスト開催の疑問視する声に対し、ユーハイムの創業者の故郷でもあり、ユーハイムの原点とも言えるドイツのお菓子「バームクーヘン」を作っていることに意義を重視して開催を継続している。自然の素材を使って安全なお菓子を提供しているユーハイムの理念が本コンテストに参加すると良く理解できる。今年の30回目は例年以上に決勝進出の方の朗読が上手であり、また25名の決勝に選考された方の内、21名が女性であったのも此れまでにない特長であった。更に、朗読が終わり、いよいよ優勝者と準優勝者を決める段階になって予想も付かないことが起きた。それは第一回目から審査委員長として大任を果たしてきた慶応大学の名誉教授が病気のために今年限りで委員長を辞する挨拶であった。委員長ありきのゲーテの詩の朗読会であり、彼が居たからこそ河本社長も30年もの長い間コンテストを続けて来れたと思われるので、聞いた瞬間コンテストは来年開催されるのだろうかと言う不安が頭に一瞬浮かんだ。しかし、その後に河本社長が委員長に対する感謝の気持ちを述べる挨拶で来年に第31回を開催する予定である事を告げたのでホッとした。また、ゲーテの詩の朗読会はユーハイムの本社がある神戸において神戸淡路大地震で被害を受けた時にも開催したので、今回の東日本大地震においても開催した事を話され、コンテストが長く続いたのは、ゲーテに絞ってコンテストを行なったことであることを話された。確かに、河本社長が指摘するように年毎に詩人を変えて開催することにしたのでは、社会的な変化や時代に翻弄されて中止に追い込まれていたかもしれないと言う言葉には重みがある。コンテストのみならず、企業の存続も又然りである。目先の事を追い続けると独自性が失われると同時に、時代に翻弄され目的を見失う恐れも出てくるし、顧客にも信頼されなくなる可能性もある。今日の様に大きな変化が起きている時こそひとつの事を遣り続ける大切さを思い知らされた感がする。来年の開催が今から楽しみだ。
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