経済理論の有効性に疑問が持たれている昨今だが、日本経済が低迷している原因の一つには低金利政策であると断言できる。今後に金利の上昇を見込むと言っても膨大な赤字国債を考えると過去の様な金利高にはなり難いと思われる。現在の国債発行残高1000兆円、地方債200兆円を含めると1200兆円の残高になる。国家だけを考えても金利が1%上がると10兆円の利息が増加する勘定だ。国家の税収は72兆円だが、国債の元利返済額は約24兆円なので、実際には48兆円しか事業費等に使えない。実に33%強が国債の元利返済に充当されているので、サラ金財政と揶揄される現象となっている。もっとも、この様に悲観的な言動を採ると、国家の貸借対照表を見れば相当の資産があるので、税収が減少して予算が組めなくなる時には資産の売却をすれば問題ないと暴言を吐く者がいる。企業で考えれば理解できることであるが、売上が減少して借金が出来なくなったり、返せなくなった時に資産を売却する場合、遊休資産ばかりではないので、資産の売却後に賃借して土地建物を借りる(リースバック)ことになり、その経費負担は軽く無いはずだ。国が道路や橋梁などを売却したならば購入した企業は通行料を取って資金を回収するので国民の負担になり、国有資産の売却など簡単には出来ない事が分かることだ。長々と国家の問題を書いたが、低金利政策は企業にとっても事業推進に際して甘い査定になっている。驚くことに、多くの企業の国内の事業収支表に金利負担部分が抜けており、資金をタダで借り入れての組み立てとなっている。多くの資金が必要な不動産会社もマンション分譲に際しては青田売り的な発想はない。金利が安いので、竣工後に売れ残りが生じても慌てない。この為、過去の様にモデルハウスを造って青田売りなど行う会社はいない。金利負担よりモデルハウスの構築の方が高くつくからである。国家、地方自治体、企業も含めて金利が上昇すればどうなるかは自明だ。日本はアベノミクスで多くの資金を市中に投入したが、それでもデフレから大幅なインフレに転ずることななかった。金利が0に近いお金など市中に増やしても金の価値が下がらないのだ。経済学者は市中に大量な金を投入してもデフレからインフレにならなかった理由を参照点依存性などにより説明しようとしているが、結果に理屈を当て嵌めているので本末転倒の様にも思われる。何れにしても低金利でマヒした日本人社会なので、金利が急激に上昇すれば天と地が引っ繰り返る様な騒ぎになると思われる。