焼肉店の食中毒事件は今の飲食店チェーン店では何処にも存在する危険
焼肉店チェーンえびすのユッケによる食中毒事件は起こるべきして起きた事件と考える。貸ビル業界にいる者として懸念していたのは、バブル経済崩壊後に飲食店業界に多くの素人が参入してきた結果、厨房内の清潔整頓が失われ、ゴキブリが蔓延する他、ネズミまで引き込んだ有り様は食中毒を懸念させるものであった。特に、若手経営者の多店舗展開の飲食店チェーンはコスト削減からアルバイトで構成され、厨房内の清掃の基本など問題外と思われた。又、経営者自身が料理人でない場合が多く、事業収支や仕入には精通しているが、お客に対するサービスや安全などは二の次になっている様に思われた。店舗を貸す側としては、グリストラップの清掃なども余り行わない他、平気で排水管に油を流すなどビル側の使用細則などを守らないテナントが多いので、現場の管理要員は施設の維持管理に大変苦労しているのが現状である。特に、最近は単価引き下げ競争になり、薄利多売の傾向が強く、お客に対する安全が蔑ろにされている心配が増していた。確かに、今の飲食店はデザイン思考であるので見た目は良いが、内部を知るものに取っては評価できる代物ではなかった。デフレ経済の影響で人々は原因も考えずに全ての物に価格ダウンを求めているが、当然、そこには限界があり、それを越えると誰かが犠牲になって支えているのが実態だ。それを理解せずに安さを追い求める社会は危険が増しているのであり、被害者になってから気がついても遅いのである。提供する側も低価格競争に疲れ、いつの間にか安さを追い求めるお客に対して敬意を払わなくなり、逆に軽蔑する気持ちも芽生えているかもしれない。今年早々に起きたおせち料理事件もその延長と思うのは飛躍しすぎているだろうか。何れにしても長いデフレ経済が食の安全を失いさせたのは間違いない。大平洋戦争前の日本は正に格差社会であり、そこには品質や食の安全などに現代ほど重きが置かれていなかった。今の日本人は戦後の豊かさによる大多数の中産階級の意識が品質の向上と食に対する安全を築き上げてきたことを忘れている。今回の焼肉店の食中毒事件を切っ掛けに日本人の価格意識が変わることを期待している。安いものには危険が背中合わせであることも然りである。
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