私も最近まで円安論者であったが、ここにきて世界経済の動向を見ると円高を維持する必要があるのではと考え始めた。円高でも地獄、円安でも地獄なら円高の方が、比較論からいえば、日本は救われるのではないかと。ミスター円と言われた榊原元財務官は今は円高論者である。当社の様なドメステックな会社からすれば円高は過去の経験から判断して厳しいのは事実である。18年前の経済バブル崩壊後の不思議な円高を経験しているので特に円高には否定的になっている。しかし、リーマンショック以降の世界金融と過去の円高の時とはかなり違う状況と考えられ、輸出推進主義者の様な円安一辺倒の考え方は間違っていると思うようになった。リーマンショック以降の欧米は景気対策で通貨供給量を大幅に増大させた。欧米諸国は当初は数年で景気回復基調に乗り、過剰流動性となった通貨を市場から引き揚げる算段であったことは間違いない。ところが、5年を経過するのに一向に景気が回復しないどころか更に通貨を市場に供給しなければならないほど肝心な所では通貨が不足になったと同時に、欧州の国々のソブリンりスクが台頭してきた。日本はリーマンショック時には平成ミニバブルと程よい円安を享受していたのと、財政再建の御旗があったことと、更には米国経済の景気対策の側面支援もあり円高に対しては容認政策を推進した。冷静に考えれば、多くの工場が海外移転した日本では輸出産業に関しても過去の様な円高の影響は少なくなっているのは確かであり、組み立て用の部品の一部を海外の工場から輸入することを考えれば輸出に対する円高危機と呼ぶには全く環境が違ってきているのが分かる。
翻って、少子高齢化社会で年金生活者が年々増えている現況を考慮すれば、円高によって物価がデフレになっていることは歓迎すべきことではある。特に、世界経済が通貨の過剰流動性になってエネルギー資源市場や食糧市場に投機資金が流入して価格を上げている状況を考えれば円安が日本経済、いや日本国民に及ぼす悪影響は大きいものとなるのは間違いないと思われる。
勿論、為替問題は一筋縄では行かない代物であり、現況の円高は日本経済の強さではなく、単に通貨の供給量不足なのは日銀の二度の景気対策の通貨供給量増加で多少の円安になった事でわかる。為替操作は一国で対応できる代物ではないことも真実であり、隣国の韓国の経済対策でウォン安が招いた結果を見る限り、現代の世界経済が過去の様に通貨安だけでは解決出来ないことが分かる。少なくても、韓国を見る限り、今の世界経済の動向から通貨安でなく通貨高の方が国家の経済は安定することが分かる。そうは言っても、米国のノーベル受賞者のFRBバーナンキ議長はドル安で景気対策を行っているのを見ると有効なのは否定できないが、反面、米国では物価が上昇し稼ぎに追いつかに現象も生じている。バーナンキ議長は資産デフレを深刻にしないために物価上昇を容認していると推定できるが、日本の場合は急激な資産デフレが起きていない状況なので、通貨安の物価上昇の方が経済にマイナスとなると思われる。しかし、円高容認も中国経済が好調であったことが前提と考えられ、東日本大震災の回復による需要も期待したほどでない状況を考えれば、円安誘導も仕方がないと推定できるが、問題は適度な円安が操作できない為替の難しさを政治家が分かっているかだろう。総てを壊すのは何時の時代でも政治家だ。
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