グローバル経済化の中でのローカルとしての国家の経済政策は有効か

安倍政権が日本の経済再生に動き出したのは歓迎すべきことだが、懸念されるのは、グローバル経済化で大企業が人件費等の安い海外に工場を移転している現実と海外で稼いだ収益を国内に還元しない状況を見ると、単なる円安による輸出の増加と規制緩和だけで日本経済が再生しないのは明らかなので、円安と株高に浮かれていないで今後の具体的な政策を見極める必要がある。

実は安倍政権が遣ろうとしている先行例として韓国の李明博大統領の経済政策がある。正に、1998年のアジア通貨危機でIMF管理下でデフレ経済を強いられた韓国経済を復活させるために露骨なウォン安による輸出拡大によってGDPは大幅に増加した。しかし、大企業は内部留保を蓄積し収益は増大したが、国内の雇用は改善する所か格差が拡大し、企業も大企業の一人勝ちで中小企業は収益が悪化するだけとなった。韓国は長い間あらゆる面で日本を模倣し追い続けてきたが、IMF管理下になって否応なしに初めて別な道を選択したのである。日本のマスコミも経済停滞から脱した韓国経済に学べと言わんばかりの論調が一時は続いた。

しかし、李明博大統領の経済政策は米国流の大幅な規制緩和とウォン安による輸出拡大であり、グローバル経済にあっては企業が栄え、国民が滅ぶと言う格差社会を作り出した結果に終わった。その様な意味では、安倍ミクスも一歩間違えると韓国の後追いとなり、GDPは増加しても国民にとっては何も効果がない結果に終わる危険性がある。

この点から言えば、韓国が次期大統領に選んだ朴槿恵さんは、父親の故朴大統領の遺伝子を継承し、大企業より国民重視の政策を実施して行くものと見られ、その上に大学の専攻学部を電子工学に選んだ経歴と言動を見る限り、現李明博大統領の失敗を改める方向に大きく舵を切り、21世紀型の社会の現出に力を発揮するものと思われる。

日本の場合も財務大臣に中小企業の元経営者である麻生さんが就任したので大企業一辺倒の政策でない、中小企業の発展や若者の雇用の面を改善する政策を安倍首相に助言するのではないかと期待できる。グローバル経済に変わっても国は世界国家が出来ない限りはローカルとして位置づけられ、その国独自の税制などが企業経営を圧迫するのである。

21世紀型の経済と社会は、20世紀とは異なることを前提に政策を立案しないと無駄を重ねることになる。正に、メーカーズなどの本に書かれている様にメーカーも20世紀型の大企業ではなく、数人規模の工場を持たない家内工業的な単位の生産が供給の主体となる時代になるのかもしれない。20世紀末にグローバル経済が大企業を生み出したが、21世紀は情報化の時代により、デザインなどと工場生産が分離した社会が生まれる可能性がある。国家もその変化にそった政策を打ち出させる所が経済的な成功を収めるものと思料する。その様な意味では先行している隣国の韓国の動きを注視する必要がある。

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