不動産の今昔その2ー番外編

所在者不明土地が全国に多く点在しており、公共事業の推進に障害となっているために、国土交通省が所在者不明土地の取り扱いに関して法的な整備を進めている。公共事業に関わる土地は国土交通省だが、それ以外に関しては財務省が対応することになると言われている。所在者不明の土地で思い出すのはゴルフ場の開発である。ゴルフ場は広大な土地を買収乃至は借地することで進められるが、予定地には共有地も多い。共有地は部落の人達が共有しているのだが、これは農業・林業・漁業の第一次産業が主要な時代の遺産ともいえる。開発する為には権利者に同意を取る必要があり、その方法として権利者の戸籍を調べるのだが、今の様な個人情報が厳しくなるとお手上げだ。戸籍を追って行くうちに海外に行った事実が判明し、子孫を追って海外にまで書面を送ったこともあった。農村が貧しい時代には移民として海外に人々は移動し、工業立国になって農村から都市へと人々は移動したのだが、戦前は長子相続により所有者が不明と言うことは考えられなかった。戦後は子供達が全員相続の対象となったので権利者は増加した。特に、相続争いも起きている他、所有者不明には様々な理由があると思われ、法的な整備で何処まで対応が可能か疑問である。そう言えば、私事だが、当家でも亡父の時代に所有地で思わぬ事実が判明したことがあった。当家も農家だったが、戦前は養蚕を営み、曽祖父の時代に部落の人達の絹糸を預かって県内の市場に持ち込み、詐欺師に騙されて絹糸を失った事があったそうだ。この時に、親戚の互助会組織が働き、親戚から借りたお金で部落の人達に絹糸代金分を支払ったとのことだが、田舎の事なので相続登記など行っていなく、亡父が必要があって相続登記を行おうとしたら親戚が抵当権を設定していたことが判明した。記憶を遡って上記の事実が分かり、親戚でも借入返済の事情を理解していた人が生存していたので事なきを得たが、その事情が分からない世代になっていたら解決に時間を要すことになったと思われる。当家の過去の出来事を見ても所有者不明の土地は何か理由があると推定され、法的整備だけでは事は簡単ではないと思われる。

次に、地面師について言及したいが、最近の都心は土地バブル様相で死語になったと思われた地面師と言う言葉が紙面を賑わしている。個人情報の強化の時代にと思ったが、犯罪者の知恵はそれを上回っているのか、それとも情報化の時代で容易く情報の入手が出来るので考える力を失った為なのか分からないが、決済が銀行振り込みになった事にも関係があるかもしれない。何時から不動産売買の決済を銀行振り込みになったか記憶にないが、昔は預手と言われる銀行振り出し小切手で決済した。登記所で受け付け完了しなければ信用できない程、不動産取引はリスクを伴うものだった。この為、取引では法務局に司法書士が書類を持参して受け付け完了したのを確認して決済した。勿論、登記に必要な書類が偽造されて司法書士も登記所も見抜けなければ防ぎようがないのは今も昔も変わらない。登記所も情報化時代に対応して権利証から権利情報に変わり、新たに登記をすれば新しいバージョンになるのだが、権利移転がなければ昔の権利証のままなのでそこに地面師などが介在する可能性がある。また、印刷等の技術の向上でパスポートなどの偽造も容易になった感があり、知らない内に他人が成り代わっていたり、印鑑登録が変更されたりと自分自身と所有資産を定期的に確認する必要が出来てきた時代でもある。不動産取引には実印と称する印鑑が必要だが、捺印した後に朱肉を良く拭き取らないと油紙で印影を写し取られるリスクがあるが、今ではこの様な事も死語になったかもしれない。経験が尊重されない社会とは犯罪者が喜ぶ世界でもある。AIなどを駆使すればするほど人自身はリスクに対する直観が働くなり、地面師と呼ばれる犯罪者の復活となる可能性がある。

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