菅首相も中小企業問題に対する意見を聞いている日本の中小企業を論じている英国人のデービット・アトキンソンのことが気になり、「国運の分岐点(日本再生最終論)」を読んでみた。データ主義と称しているだけあって気づかされる点もあるのだが、その時代に日本に住んでいなかったのでデータに基づいた分析には荒唐無稽なものもある。中でも戦後日本の1965年以降の中小企業の増加を植民地化を恐れる結果と断言しているのには驚いた。今の社会保険制度を維持するのには高齢少子化時代には時給を上げて税収入上げて支出のとのバランスが必要との考え方は一面的な見方から間違ってはいない。また、日本が移民で人口が増加している米国を経済モデルにしているのは間違っているという意見も正論と言える。更に、中小企業は優遇税制に守られて企業を大きくする努力をしないというのは極論過ぎるが、その税制のマイナス面は確かにある。しかし、中小企業を減少させれば最低賃金が上昇し、一時的に失業者が増えるがそれも時間の問題で解消する件は肯定できない。その理論の背景には、自分が現在経営している小西美術工芸社と英国の経済データを用いていることだ。前者は特殊な業種で、企業数が少なくなれば売り上げが増加し、職人の雇用も図れるからだ。その業種を持って日本の中小企業全体を論じるのは科学的な根拠もデータもない。また、英国の事例を挙げて論じているが、英国も移民を入れている国なので、移民受け入れに消極的な日本と比較するのは米国同様に間違っている。勿論、私自身は移民の受け入れには反対ではないし、多神教の日本だから一神教の欧米諸国より遥かに移民との融合が出来ると思っている。尤も、日本が今以上の格差社会は拡大すると移民に対する許容性が失われると思われるので、移民政策の変更は時間との勝負かもしれない。日本の中小企業はファミリービジネスが大半なので、会社資産と個人資産が曖昧であり、簡単には合併や廃業が出来難い。星野リゾートの星野社長も一族経営を解消するのに12年を要したと言っている。その上、人材の確保に時間が掛かったことも吐露している。菅首相が中小企業対策で話を聞くなら日本の過去を知らない外国人より星野リゾートの星野社長の意見を聞くべきと思料する。
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