低金利では優れたマネジャーが不動産業界では育たない!

日本は10年以上低金利が続いている。低金利は事業資金の調達には有利だが、不動産業界を見ればこの低金利は多くの杜撰なプロジェクトを生み出していると思われる。企業、特に不動産業界では事業に多額の資金が必要となるので、「調達」と「調達金利」が重要となる。古い話で恐縮だが、27年以上前は金融機関から資金を調達するのは至難の業であった。その上に調達金利も高い時には10%を超えていた。私がプロジェクトマネジャーとして上司から事業計画の立案を指示されたときには、金融機関に差し出す担保物件の評価、更に調達金利の予測することから始めた。もちろん、この事業計画と平行して地権者との折衝なども行なったのだが、プロジェクト推進に対して担保物件による資金が不足する時には不本意だが発注先のゼネコンの完成保証を取り付けて乗り切ったものである。然も、調達金利は7%を超えていたので早期に完成物件の売却部分の買い手を見つけなければプロジェクト利益がなくなってしまうので大変であった。私が低金利では優れたマネージャーが育たないと指摘したのは、現在の様な低金利では過去の様な資金調達の困難さとと高金利のリスクに対して危機感を持つことがないので、絵に描いた餅の様なプロジェクトやインフレでもないのにその内何とかなるだろうと言う考え方が蔓延していると思われるからである。もちろん、それ以上にレバリッジを聞かした資金調達と高収益のビジネスモデルが本来のプロジェクトリスクを軽減化した様に思える。多くの不動産運営はアセットマネジメント(AM)によって行なわれているが、AMのスタッフの多くが不動産・建築の現場を知らない人で構成されており、その下に組み入れられているプロパティマネジメント(PM)会社やコンストラクションマネジメント(CM)会社の幹部も畑違いの分野から入った人が多いので後で問題が起きる処理が多い。特に、不動産証券化や不動産ファンドなどの出現により引継ぎの概念が異なる金融機関の出身者が不動産・建築業界の幹部になったことが多くの間違いを生じさせている。即ち、極端な例だが、金融機関の引継ぎとは前任者の不正を見つける機会を得る事だが、不動産・建築業界では顧客サービスを継承することである。また、金融機関の方には耳の痛い話だが、金融機関は顧客に対する嘘を許される業界であり、不動産・建築業界は誠実さと一貫性が重んじられる全く正反対の業界である。話が横道にされてしまったが、現在の低金利は不動産業界に携わる人達ばかりでなく、一般の人達もお金に対しての調達意識が甘くなっており、プロジェクトだけでなく人生のマネジメントまでも狂わしている様に思える。

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