貸ビル業とは!!

貸ビルにおける入居率は経済的なファンダメンタルと関係しているが、日本に不動産ファンドなるものが入ってきてから貸ビル業に対するオーナーの考え方の変化が賃料デフレを助長しているのではないかと考える様になった。デフレ経済のために容易に賃料の引き上げは出来なくなり、不動産ファンドを運営するアセットマネジメント会社は建物の管理費に注目し、管理費を引き下げて実質賃料を増やしたのである。確かに、建物管理の経費には無駄な部分も多くあったと思われるが、管理費の経費節減が行過ぎるとテナントに対するサービス面が後退し、それが賃料引き下げ要請に繋がる恐れが多いことを殆んどのアセマネ担当者は無視している。貸ビル業の定義について論じるつもりが無いが、貸ビル業とは単に箱物を貸して賃料をとることではない。貸ビル業も今では世間に認知された業種であるが、40~50年前には水商売と同じ信用しかなかったことを銀行マンから聞いたことがある。簡単に言えば、昔はテナントの入居に苦労したと言う話である。このために、今日アセマネの担当者が行なっている様な箱物(ハード)を貸す意識ではなく、テナントに対するサービス、いわゆるソフトも合せて成立していたのが貸ビル業であった。不動産ファンドが成立する前の貸ビル業界の管理費は何故高かったのかは、貸ビルオーナーは箱物(ハード)とサービス(ソフト)を提供していたので管理会社にそれ相当の費用を支払っていたのである。それが不動産ファンドの考え方が主流になってくると箱物(ハード)だけを提供する流れに変わり、テナントの確保に大事なサービス(ソフト)を失ったのである。箱物(ハード)だけを借りている意識はテナント側にも浸透したので、テナント側はオーナーに遠慮することなく賃料引き下げを要請することになり、今日の貸ビル業界の姿となっている。箱物と言えば無駄な公共投資の典型と同じだが、良く考えると役所も公共サービスの提供なのに昨今の貸ビル業界と同様な考え方であるのに気が付いた。全ての業界が若い世代の活躍する場所になったが、箱物提供は正に時宜を得て急速に進んだと考えられる。その理由はサービスには経験が必要だが、完成した箱物だけの提供にはサービスが必要ないからである。サービスの提供を忘れた貸ビルには未来はないと考える。
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