先週、福井大学で原子力学会があり、学会に参加する知人から誘われて初めて福井市を訪れた。距離的に飛行機で行く事を考えて調べたら福井空港はあるのだが規模が小さく一般旅客の空港ではなかったことが分かった。この為に、最寄の空港を探したら石川県の小松空港であった。飛行機は移動時間は早いが、搭乗時間や空港から目的地までの走行距離を考慮したら新幹線で行く方が良いことが分かった。勿論、北陸新幹線は開通していないので、東海道線経由で行く時は京都乗換え、帰るときは米原乗り換えと言う選択をした。
今回の福井行きは最初にトラブルに巻き込まれた。不運にも新富士と三島間で人身事故が起きて1時間以上の足止めを喰らった。当然に京都乗り換えの予定の特急サンダーバードには間に合わず、京都駅で僅か15分で次の特急電車の乗車券に取り替えて漸く目的地の福井駅に向かうことが出来た。以前は新幹線で自殺など起きなかったが、ここ数年新幹線で起きている。然も、不思議なことに新富士と三島間である。
漸く、福井駅に着き、先ずは駅近くに取ったビジネスホテルにチェックインして市内の散策に出かけた。予定より1時間以上到着が遅れたので、先ずは福井城跡に行き、その後は幾つかの神社に参拝した。途中で小雨が降ってきたので、アーケードの商店街に飛び込んだが、休日の為に殆どの店が閉まっていた。尤も、良く見ると閉鎖している店舗が多いのに気が付いた。福井はメガネ製造で有名な町であり、全国の中小企業の社長の出身地としてトップになったこともある所だ。その福井でさえ市内はシャッター通りが多く、町に活気がないのが良く分かった。
地方を訪れて何時も思うのだが、休日に店が休んでいるケースが多い。以前、大分の杵築に行ったときにも丁度日曜日で飲食店も開いてなく難渋した。一応、杵築は観光地としての位置づけと思われたのにである。
逆に、温泉場などは逆に日曜・祭日しか開いていないレジャー施設も多く、働いていないお年よりも平日に楽しめないちぐはぐな現象がある。
行政も最近は変わりつつあるが、以前は土・日、祭日は一切業務を行わなかった。この為に、役所から書類を取り付ける為に貴重な有給休暇を取って対応したものである。役所もサービス業なので業務によっては平日に休んで土・日、祭日に仕事をするのが普通と考える。それが出来なければその業務を民間委託か自動化を図れば良い。
確かに、地方の疲弊は円高で海外に工場移転した事も原因の一つだが、過剰な公共投資で地方経済を牽引してきたビジネスモデルにも問題があった。地方が公共投資に依存する体質は中央から地方に権限と税の移転を行わない限りなくならない。
地方都市の再生には全国共通化した考え方の除去が必要だが、新築の家を見る度に空しくなってしまう。地域の独自性は地産地消から始まって地域の伝統的な物を復活させることが重要だが、町の商店街が消えて大型スーパーで買い物をする限り無理なことが分かる。良く例えに出るが、地方鉄道の維持を叫ぶ人達が電車に乗らないで自動車を乗り回している現状だ。経済成長がマイナスになり、所得が減少する中では安い商品に頼らざるを得ないが、その事が悪循環となって地方経済を疲弊させているのが現実だ。今更ながらの議論だ。マスメディアは無責任に地方の努力が足りないと批判するが、公共投資経済のビジネスモデルを変えるには、中央集権化した行政を先ずなくすことから始める必要があるということに触れない。江戸時代の様な一つの藩が国であった時代に地方を戻すことが地方の活性化には必要なのである。ITC時代には、地方が一つの核となり中央を介さずに必要に応じて結びつくことが効率の良い在り方なのである。その点から言えば、二重行政は失くすべきだが、道州制は必要がない。行政区分は小さくして小回りが聞く効率の良いシステムを構築すべきだ。
さて、話は逸れてしまったが、福井で驚いたことがあった。市内で知人たちとミーティングを兼ねた夕食を鮨屋で採ったのだが、先ずこの鮨屋が分かりにくいのには難渋した。スマートフォンがなければ夜なので辿り着けなかったと思われた。
写真では看板の明かりが灯っているが、満席の時にはこの明かりも消えており、然も暖簾も中にあるので店内の入り口は暗く、営業していないと勘違いする店であった。知人は良くこんな店を見つけたかと驚きだが、上手い鮨を食べながら更に驚いたことがあった。
鮨屋での食事で皆酒飲みなので自然に地酒に思いが行くことになる。
福井には黒龍などの銘酒もあることを知っていたので、仲居さんに地酒を注文したら、店では置いていないとの返事が帰ってきた。店内を見回すと確かに他県の酒で東京でも飲める酒しか置いていなかった。
その時に、同伴していた方が昨日の飲み屋にも地酒が置いてなかったことを不満顔で言った。これでは地方再生の意味がないと改めて感じてしまった。幾ら福井人は経済に長けていても、地元の酒を飲まずに安い他県の酒を飲んでいたのでは、論外と思われた。
この様なケースは全国津々浦々で見られる光景ならば、地方再生など夢のまた夢と思わざるを得なかった。
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