低金利の苦い思い出と金融緩和策の毒

10数年ぶりに友人から電話が入った。友人は国を守る仕事からリタイア後は建物を守る仕事に就いて役員として現役を続けている。10代に彼との縁を作ってくれた親友が彼の実家と近くなので時々状況は聞いていた。彼は長男なので相続で地方の資産を継承し賃貸に出していることは聞いていたが、今回の電話の内容は主たる賃貸物件が解約となる為、その後の活用に関しての相談だった。地方の名門校を卒業したので、地元で不動産業を営んでいる高校の同級生に相続後の資産活用に関してはアドバイスを受けてきたが、地方では解決策が見いだせないので、東京在住の私に相談して見るかとなった様だ。地方と言っても東京から60kmなので、一応首都圏に入るエリアだ。しかし、地方の衰退を象徴している様に土地が売れず、貸したくても借り手が居ない状況に先祖から継承してきた資産を維持するのに苦労することになった。彼とは彼の前職時代に家を購入する時に住宅ローンに関して「固定金利」か「変動金利」かで相談を受けて結果的に失敗させた苦い思い出がある。サラリーマンなので多少高くても長期的なローンであるので固定金利が無難と判断したのだが、彼の奥さんは変動金利を勧めていた。結果は私の大きな誤算だった。低金利が継続し、今やマイナス金利になったのである。経験など役に立たない世界が到来した。今回の電話で相談を受けた時に私は開口一番に奥さんが私に相談することを知っているのかと訊ねた。私にとってそれほど苦い思い出であり、振り返るのも嫌な出来事であった。翻って、リーマンショック後に金融危機を防ぐために先進国など国が行ってきた金融緩和策も2018年を境に反転する動きが出てきた。金利の上昇や資金回収の動きが出てきた中で新興国の発行した国債や企業の社債の返還が始まることになり、国家と企業のデフォルト懸念が出てきた。「低金利の罠」とも言うべき事態だが、日本も余りに長く低金利の中で事業が進められてきたので、金利上昇による事業の採算性など危惧する面が大きい。尤も、日銀も表面上は低金利策を継続すると言っているが、欧米などで金利上昇が進めば日本だけ低金利政策を維持するのは厳しくなることは一目瞭然だ。水面下では金利上昇に備えた研究が始められていると思われる。金融緩和政策は世界中の国に経済発展と豊かさをもたらしたが、その過程では金融緩和の毒も入っており、未来投資に名を変えたギャンブル投資紛いのプロジェクトも多いと推定される。金融が厳しくなった時に真価を問われるのだが、過去の経験が通用しない新興国の国債と企業の社債の償還ラッシュで何が起きるのかを必死に想像力を働かせて考える必要がある。

  • entry697ツイート
  • Google+

PageTop