一般の人達は専門家と称する人に弱い。人に依っては、専門家を「神」扱いである。しかし、専門家とは広義的には何かしらの専門的な技術を有する人と解釈できるが、その道の専門家だから全てを知覚し、実践的知識を有しているのではない事に気づいている人は少ない。例えば、弁護士と言えども資格を取得して法律事務所に属すれば、どの分野でも通用するようなゼネラリストはいない。少なくても得意分野として刑事訴訟法か民事訴訟法かを選び、更には労働法専門の場合もある。近年は時流の知的所有権で稼いでいる弁護士もおり、得意分野は細分化されている。ちなみに、労働法専門の弁護士に不動産関係のトラブルを聞いても実務的に不案内の場合が多く、一般の人はそれさえ理解していない。当たり前の話だが、弁護士は判例や法律的な事は詳しいが、建築知識などの専門知識は素人レベルである事には依頼者は無頓着である。それでも優秀な弁護士は友人・知人のその道の専門家に聞いて対応するので問題は少ないが、その方法は付け焼刃に過ぎないので他の専門業種の知識は一般の人と同じ素人レベルと考えて相談したほうが無難である。弁護士だけでなく、会計士に関しても同様である。会計士で不動産などの資産に関して実務的に詳しい人は少ない。殆んどの会計士は、決算業務が仕事の主体であり、不動産資産などは相続税の申告の時しか関わらないからである。最近は時価会計制度の導入で如何にも会計士は不動産の時価に詳しいかのような錯覚を多くの人に与えているが、不動産業を知っていれば棚卸資産に時価会計など導入しない。翻って、我々の建築業界も又然りである。建築士は住宅関係は別として事務所ビルや商業ビルなどに関しては、完成後のオペレーションに関わっていないので多くの設計がメンテナンスに関して不案内である。しかし、この様な不案内は未だ良い方で、最大の問題は専門家故に見逃してしまうミスがある。このミスは複数の専門家の現場会議を経ても起きる事である。このため、当社などは敢えて専門家集団の会議に素人を入れてチェックするシステムを採用している。素人の疑問は正しい場合が多いからである。専門家のために見えなくなってしまう或いは見逃してしまう怖さが現実にはある。特に、最近は規制緩和がどの業界にも行き渡り、職人的な執拗さでより良い物を目指す姿勢の欠如や安易に物事を判断してしまう傾向が強いので尚更専門家を信用するにはリスクが大きい社会となっている。専門家の言葉だからといって簡単に信じない事が重要だが、医療と同様にセカンドオピニオンの考え方も色々な分野の専門家に対しても必要な時代と思える。
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