不動産売買の仲介で両手はコンプライアンスに問題がある

数年前に一部上場企業の不動産会社の元社長さんと不動産仲介の手数料の話になり、私が両方から手数料を取るのは違法だと言ったので議論となったが、数日後彼が違法でないことを調べて間違いを指摘されたことがあった。私も不動産業界が長いのだが、売買仲介に関して両手と言われる行為は違法と何故か思い込んでいた。単純に考えても買い手と売り手の両方の仲介者になることは利益相反であることは疑いもない。当世風のコンプライアンスにも抵触するのではないかと考える。翻って、賃貸借物件の仲介では、両手は違法ではないが、手数料受領の面で1ヶ月の制約が課せられており、両手の旨味がない。勿論、広告宣伝料の請求の便法で実質的な収入を確保しているケースは多い。しかし、売買の仲介の場合は3%が両方の仲介業者となっても片方の手数料が1.5%になることはない。一般的には法律は整合性を持たせるものだが、この違いが何故起きているのか分からない。

何れにしても、私が両手は違法と思い込んだのには今となっては記憶にはないが、何か理由があったかとは考えられる。要は利益相反になるので、買い手と売り手は売買の場合には金額が大きくなることもあり、同じ業者に依頼することはないとの暗黙の前提があっての法律だったのかもしれない。その様に考えれば、賃貸借の場合は貸し手と借り手に関しては利益相反の影響は少ないと見られて同一業者が契約締結に立ち会うことを想定して手数料の上限が定められたとも推定できる。

不動産売買は大きな金額が絡むので利益相反になる可能性が高く、同一業者に依頼することがなかった時代から何時の間にか気が付けば不動産売買は大手不動産では両手が主流になった。この為、両手にならない場合は、物件を紹介しないと言う不動産流通において自由度が低くなってしまった。勿論、両手を当然と考える大手不動産仲介業者は、不動産仲介に際しては重要事項説明書などで買主や売主の双方に対して事実を記載するので問題ないと言うかもしれないが、問題は売買価格に関してである。両手を貰える相手先しか選定しないことは大いに考えられるので、業界の透明性を考慮すれば両手に関しては自主規制べきものである。今後も不動産売買の仲介で両手が横行すれば、流通面で閉鎖的となり、顧客に対して取引の透明性が疑われ、ひいては業界の信頼性が低下することになる。不動産屋から不動産業者に地位を向上させるにも両手に対する自主規制が必要だ。

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