築36年で管理規約を制定する難しさは、マンションデベロッパーが購入者の同意を得ないで公正証書規約で制定している事実からも分かります。購入前の設定ではなく、竣工後の大分年数が経過したマンションで管理規約を制定するには区分所有法の特別決議によって行います。勿論、近年の規制緩和の影響で、過去には規約制定には全員の同意が必要でしたが、現在は全体の4分の3の決議で制定できるととは言え、通常の総会の過半数の出席で、且つ多数で決められる議案と比較すればハードルは相変わらず高いのは確かです。
管理規約の大前提は公平さと建物の管理保全に必要な規制ですので、基本的なたたき台は国土交通省が公開している標準管理規約のモデルを参考にし、その上で当該マンションに係る条文を加筆・変更することになります。当該マンションは築年数から既存不適格なのは当然ですが、問題は違法性のある物件だったことでした。しかし、当初案ではこの問題を無視して作成する訳には行きませんので、弊社段階では違法性の問題を念頭に作成しました。
管理規約の内容に関しては、管理組合の役員と居住者の方に先ず説明し、後は区分所有者の人達が条文の是非を議論して決めていただくことにしました。弊社が最初に説明した以外に議論の中に入らなかったのは、自分達で管理規約を作成する意識を持ってもらう必要があったからです。管理規約の制定で最も重要なことは与えれたものではなく、自分達が作ったと言う誇りです。なお、居住者外の方々は容易に参加する機会がないと考えて1ヶ月以上前に管理規約案を郵送し、必要に応じて弊社が内容を説明し、意見を伺う事にしました。
今回の管理規約制定作業で痛感したのは、当該マンションの自治会時代から各所有者の信頼を得て運営をしてきたことでした。この為、外部の所有者で作成の議論の場に参加できなかった方から修正等の意見が出ませんでした。臨時総会の議決権の確保で出欠の確認を連絡した時には、出席できない方から全員の委任状も取り付けることが出来ましたので、理事長さんも驚いていました。理事長さんと役員の方は仕事が忙しい上、腹の立つ個人的な意見も聞きながら皆を賛成する方向に纏めていただいと思います。若い理事長さんでしたが、会計担当の理事さんと共同で粘り強く規約作成に向けて動いてくれたことが成功に到ったと思われます。
臨時総会当日、理事長が議長に就いて議決に必要な出席者の確認を行い、適法に成立したことを宣言して議事に入りました。議事においては、事前に意見を纏めていたこともあり、大きな波乱もなく、順調に推移しましたが、最後に会計担当理事と自治会時代の会長さんと新管理費と修繕積立金の未納の方との精算を巡り緊張した場面がありましたが、管理規約制定後の管理組合運営に過去のわだかまりを解消するには良かったと思われました。なお、全員賛成で管理規約は議決承認されました。理事長さんは呉越同舟の管理組合と理解しており、管理規約制定後も色々と問題が生じる懸念を持っておりますが、管理規約制定により当該マンションは管理運営の憲法を持つことになり、36年目にして漸くスタートを切ることが出来ました。
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