愚かな社会の愚かな判決

偶然に目にしたWEB雑誌の記事に目を惹かれた。

タイトルは"敷地に戸建て、マンション容積率違反に"でした。東京都内の杉並区の分譲マンションの敷地内に戸建て住宅が建築され、マンションが容積率違反の違法状態になっているとの記事に最初はあり得ない話と思い、記事が間違っているんではないかと疑った。しかし、読み進んで行くに伴い、この様な事が他の事でも起きていたらと気になりだした。小泉内閣時代の建築基準法の改正により、建築確認申請の審査が民間会社でも可能となり、指定確認検査機関が出現した。行政庁でも建築物の巨大化で対応してきれなくなったのに採算性が求められる民間の検査機関に出来るのかと言うのが私の率直な感想であった。民間検査会社の出現はその後に構造偽装事件と業務発注の変化の二つの面で現れ、今後が懸念される代物であった。不祥事が起きると行政は待ってましたとばかり今度は別な方法で規制強化を行うが、先の構造偽装事件後の規制強化と業務発注の変化は弊社の様な設計事務所に関しては色々な面でマイナス効果が大きく働いている。

然し、今回のマンションの容積率違反は規制緩和以前ならば起こり得ない事件だから余計に愚かな社会を作り出したことに腹が立った。私も知らなかったが、指定確認検査機関は業者から申請書が提出されると概要書を特定行政庁に送付する仕組みになっていることだ。今回はその送付で杉並区役所がマンション敷地内に建築される戸建て住宅でマンションの容積率違反になる懸念に気が付いた。同マンションは1971年と古く現行許容容積率/建蔽率は150%/60%だそうだ。約3000㎡の敷地として建築確認を取得し、鉄骨鉄筋コンクリート造地上11階建のマンションが建築されている。問題は敷地3000㎡の内、1700㎡が借地であり、その借地部分が競売に出されて所有権が不動産会社に移転したことだ。競売の経緯等は書かれていないので、今回の事件とは別に幾つかの疑問点はある。それに言及しないで今回の件だけを取り上げても意味をなさないと思うので、先ずはその点から述べるとする。一般的には底地である土地の所有者が経済的に破たんした場合には推測の域をでないが、債権者は借地権者に底地の購入を勧める筈だ。なお、当該マンションは敷地の約57%が借地であり、所有権と借地権がマンションの敷地権としてどの様に対応していたのかが不明だが、一部のマンションには所有権の敷地が付いており、一部のマンションには借地権の敷地である様な分け方はしないので、考え方としては共有持分(所有権)と準共有持ち分(借地権)の両方の持分で全戸成り立っていたと推定するしかない。

<以下次に続く>

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