建物の老朽化には①税務的老朽化、②物理的老朽化、③社会的老朽化の3通りの考え方があります。①は償却費の計上に係わるものであり、②は建築物その物の寿命であり、③は科学の進歩等により機能的に時代に合わなくなったものです。過去の建物の老朽化による建て替えは殆どが①を理由によるものでしたが、過去30年は阪神淡路大地震と東日本大地震により行政の誘導もあり、旧耐震(1983年以前の建物)の建物を主として建て替えて来ています。しかし、ここ数年は旧耐震以上に③の機能的に時代と合わなくなったことによる大規模開発が推進されてきています。今から約40年前頃にインテリジェントビルの概念を有した建物の建築が計画され始めました。インテリジェントビルとはビルの運営管理にコンピュータ制御システムを取り入れたものです。この時代の建物はテナントに対するよりはビルのオーナーに対するシステムでした。インテリジェントは1年から2年間の推移で第一世代、第二世代、第三世代と進化して行きました。第三世代は電話機能のPBXをビル内に設置して運用管理システムを構築し、尚且つ電話システムの収益で管理費の一部の負担を軽減する仕組みでした。インテリジェントビルはwindowsの歴史とマッチングします。windows1.0が1985年リリースされ、windows3.1が1992年にリリース、そして社会に大きな影響をもたらしたwindows95が1995年にリリースされ、インターネット通信が社会に一般的となったwindows98が1998年にリリースされました。当社ではこの時期にインターネットサーバーを社内に設置し、大企業でも未だ余り普及していなかった社員一人にPC一台を与え、会社のメールアドレスの取得とホームページの開設を行いました。その後は共同開発後に運営管理を受託した管理組合のHPを作成し、地権者に対するサービスを開始し、更にネット上でテナントに対するお知らせやビルに係る届け出等を行えるシステムを構築しました。このシステム開発は2000年前後でしたので先駆的な事でした。海の向こうの米国ではITベンチャー企業が勃興し、色々なシステム開発の最盛時期でもあります。当社が先駆的に取り組めたには偶然が二つ重なった為でした。一つはリース会社に勤務する友人からリース契約流れのPCがあるので使わないかと言う相談でした。もう一つは学生時代の友人が商社の電子機器の部門に勤務していて虎ノ門で酒を飲んだ時に米国製の安いインターネットサーバーがあることを聞いたことでした。後年、リース会社に勤務していた友人の家族と海外旅行をした時に友人が自分の子供たちに彼は日本のスチーブジョブスと言って持ち上げてくれました。話は大分脇にそれましたが、現在のビルの再開発は社会的老朽化によるものですので、未だ十分に使える築30年前後でもどんどん壊しています。勿論、全てのテナントが最先端の機能を有する高い賃料の建物に入れるわけでもなく、築古小型ビルは依然として税務的老朽性や物理的老朽化、更には旧耐震を理由に建て替えを計画するものと推定されます。なお、社会的老朽化には環境に対する地球温暖化に関するものも含まれますので、大企業に関しては社会的老朽化による建て替えのビルに入ることは必要になると思われます。
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