黒川創氏の「ソウルの星」を読んで

朝鮮王朝から大韓民国、そして日本との統合の時代に朝鮮と関係が強い日本の作家と日本と関係がある朝鮮の作家のそれぞれの足跡を辿った読み物なのだが、全く時代背景は異なるものの、今回の米国のトランプ大統領の相互関税問題で直面した韓国が今後の生きる道として日本を選択せざる得ないのは歴史の皮肉と言える。日韓統合の前にも国内を二分した朝鮮内の争いは伊大統領の弾劾の是非による国内世論の分断と似ていると思わざるを得ない。勿論、過去の朝鮮王朝は清を宗主国としていたが、日清戦争後に朝鮮は独立国となったものの一本立ちが出来ないのでロシアと日本を天秤にかけた争いを展開した。日本の実情を調べて日本が当時の朝鮮を統合するのは軍事的にも財政的にも負担があることを見抜ければ、逆に日本を利用しての近代化を図ることが出来た。先に統合された台湾が良い事例であった。しかし、統合に消極的な伊藤博文が暗殺されたことにより、逆に統合の勢力が主導権を握って日本に否応なく属することになった。トランプ大統領の相互関税問題では、朝鮮半島は北朝鮮と韓国の二つに分かれており、大国になった中国とロシアが隣国に控えていることと、過去には朝鮮半島に無関心であった米国が世界平和の為に北朝鮮を懐柔したい米国の存在があることだ。北朝鮮は本音では中国と距離を置きたいので米国との交渉は望むところであり、現状はロシアと強力な同盟関係を締結したので、米国との交渉には第一次のトランプ政権時より有利な位置にある。尤も、北朝鮮との交渉では米国は日本の経済支援を前提にしており、韓国としても日本と足並みを揃えなければ北朝鮮に対して不利になる可能性がある。韓国としてはロシアとの関係は北朝鮮と軍事同盟を締結したので関係改善は難しく、更に中国に関しても米中対立で親密化を進めることは出来ないので、韓国の今後の選択肢は日本以外にないのである。幾ら北朝鮮と親密な韓国民主党でもロシアと軍事同盟し核を武装した北朝鮮に対しては経済力だけでは対等に交渉が出来ないのは自明であり、無理に接近すれば逆に飲み込まれるリスクがある。歴史は繰り返すと言う言葉があるが、全く同じに繰り返すのではなく、状況の類似性であり結果と思われる。戦後80年、日韓国交回復60年の節目に朝鮮半島を舞台に日韓の否応なしの接近が始まる。

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