日本における不動産開発の貧困さが金融危機に勝てない原因

今回の金融危機に欧米と比較して影響が少ないと言われた日本で何故不動産に対するリスク意識が高まって不動産融資に警戒感が出たのか。この見方には色々あると考えるが、オーソドックスな言い方としては、日本の不動産の活況は欧米のファンド資金によって支えられてきたので、欧米の金融危機の影響が日本にも及んでくると言うものである。この見方も間違いではないが、ファンド資金はあくまで梃子資金の流入なので決定的なものとは言えない。では何が日本の不動産に対して不安を生じさせているかと言うと、「金太郎飴」の様な不動産開発の貧困さが一番の原因と考える。多少は場所的な価値と建築物の外観の差別化はあるものの、開発コンセプトは殆んど同じであることに危惧していた。少なくても、開発地域の歴史を踏まえた開発計画を立案し、他所の地域との差別化を図った開発ならば、資金の貸しても不動産の価値の下落に対する不安は減少した様に思われる。マンション開発も然り。高層マンションが人気となれば何処の会社も高層マンション販売に注力する。これでは直ぐに高層マンションの供給過剰が起き、資産価格が下落するのは目に見えたことである。もちろん、企業規模によって点の開発しか出来ない場合もあるが、その時には街全体の将来を見据えての建築計画を立案すべきである。それが地上げ屋としての誇りであろう。森ビルの六本木開発、三井不動産の東京ミッドタウン開発などは地域の発展を阻害する開発エリアだけで完結するクローズド計画であり、自己の利益しか考えていない。この様な金太郎飴的な開発を見せられては、資金の貸手として不安が生じるのは当たり前である。若手で地域の歴史的な姿を残しながら新しい街造りを考えている人達もいるが、その様な小さな会社には資金が集らない。日本の資金の貸手が金太郎飴だから日本の不動産開発が貧困のままとも言える。今回の危機に20年前の不動産バブルの教訓を全く生かされていないのはバブル時代に失敗を学んだ人達がいなかったことであろう。成功者の言葉は企業に必要ないのである。逆に、失敗した人達から多くの事をを学べば明日の成功に繋がるのである。頭でっかちのエリートがつくる社会は砂上の楼閣に等しい。不動産開発とは街中を足で歩き、その地域の歴史と文化を学び、その街の将来像を見据えて行うものであることを肝に銘じるべきである。

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